古志会員による一句鑑賞

美しい町というのは単に町並みの事をいうわけではない。それではちょっとあまりに味気ないだろう。この句、江戸でも海辺の魚村でも良いけれど、雛に栄螺とはなんとも嬉しいお土産ではないか。奉るという心がよく出ている俳句だ。言うまでもないけれど奉るのは栄螺ではなく優しい気持。魚屋も八百屋も呉服屋も、この町の人達は皆きっと顔見知りだろう。魚売も含めての町並みであり、こんな町なら住んでみたい。毎年雛を飾りにこにこと魚売を待っていながら。それにしても雛様もびっくりしたに違いない。(西村麒麟)
出典:『浅草川』

§3667 · 3月 25, 2012 · 今日の一句(2011年) · · [Print]

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