京の夏料理の代表、鱧。白身は上品な味わいで、皮や骨、浮袋までいただける。午後の夏座敷、簾戸の向こうは、いまにも大粒の夕立がやってきそうな空模様である。鱧の灰色の皮と、次第に落ち始める雨音が鮮やか。食通の作者ならではの夏の […]
それまで街なかを走ってきた列車は、鉄橋に来ると俄かに明るくのびのびとした音をたてる。鉄と鉄が作りだすリズムをもったこの響きは、意外と遠くからでも聞こえる。夏の河原を散歩していたときであろう、作者はその「はためき」を目と耳 […]
「家人に」という前書きがある。夫に看病されて短い夏の夜が明けてしまった。私が夫に看病されるようになるなど思ってもいなかったのに、これも縁であるのだなあという一句。いよいよ病が重くなったころの句であるが暗さは感じられない。 […]
「語りたきこと」が「沖にあり」と言われると、そうだなあと思う。我々は櫂を操り、そこへ漕いで行く。閒石の取り合わせは、からっとしていて滑らかだ。そして、不思議な均衡がある。(村松ニ本) 出典:『和栲』
夏の夜は短い。東の空に曙光がさしそめると、地上の万物はまだ闇のいろを纏いながらその輪郭を浮かびあがらせる。その中にあって水という物質は、かすかな光をいちはやくとらえ、撥ね返しつつ、透過させつつ、己が姿をあきらかにする。夏 […]