麦畑がどこまでもつづくなあ。抜け出たと思ったら、刈り入れ直前の、黄金色にまばゆい、またまた麦畑の中だ。蒸し暑くなってもきたぞ。「もなほ」から、歩いている息の調子やらの即事の体感とともに、こころがさまざまな思いへひらかれて […]
乳を求め子が泣く。乳をやり、おしめを替え、やっと寝かせたと思ったらまた泣き出す。夏の短い夜、自分はほとんど寝られなかった。でも本当は朝が来て良かったと思う。さっきまで子を放り出したいほど孤独だったから。もう人が起き出し、 […]
甲州境川村(現笛吹市)の旧家長男に生まれた蛇笏。早稲田大を中退して帰郷、峡中から俳壇を睥睨するように骨太の名句を世に送り出した。掲句は死ぬまで故郷で句を詠み続ける宣言ととれるが、「夏雲群るる」という字余りの措辞と、切れ字 […]
滋養強壮の効果があるとされる蝮酒。飲んだことはないが、この句を詠めばよくわかる。鼻をつまむくらいなら飲まなければいいと思うが、それくらいしてでも蝮の生命力にあやかりたいのが、人間というもの。それを素直に詠んだ。作者の人柄 […]
淵とは、水の色をことのほか深く感じるところ。そこで涼んでいるというのである。それは、水か、はたまた人か。水があたかも意識をもっているかのように詠まれている。密教学につうずる俳人、河原が選んだのは、人間の存在、その思念のあ […]