月の光を浴びて、静かな白い花のように柿若葉が空に浮かび上がる。いち早く柿若葉が萌え出すのではない。月光をやさしく返してくる若葉は柿若葉だけなのだ。太陽の下、きらきらと柔らかく風に吹かれる様子は格別だが、月の下での華やかさ […]
てんとう虫がまさに飛び立つ様を詠んだ。極めて明快で医者(素十は医者)が人体を診るようだ。客観写生の優等生のような句。だが同じように作れるかというと、これが難しい。いわゆる利口な人ほどつまらぬ主観が邪魔するから。おそらく虚 […]
松瀬青々に「むらぎもの心牡丹に似たるかな」の句あり、と前書きがある。「むらぎも」とは臓腑のことで、心にかかる枕詞。しかし、この句には「心」という文字がない。おそらく、心は牡丹そのものにたくされたのだ。心物一如。(関根千方 […]
ときには、舟や牛馬の背などに乗ろうとも俳人は、あくまでも二足ロコモーションで果てしなき陸をゆくばかりの人種であろう。一読、単なる凡庸な句のようではあるが、ゆたかな眼射しは隠れようもない。「存在の寂しさ」こそポエジーの源泉 […]
仏教の戒律を伝えるために、十年以上にわたる苦難の末、渡来した鑑真は天平時代に仏教文化を確立した人である。日本に来た折には視力を失っていたという。唐招提寺に座する鑑真和上像を前にして、光を失い閉じられた眼を若葉で拭ってあげ […]