吉野は桜の花ざかり。その花をめでつつ来た。気がつけば、新緑の大峯山が目と鼻の先。嶺々の上には、おおきな青空が広がっている。やがて、花にも散る時がやってくる。現代の読者の特権として、吉野から大峯までを、上空から鳥瞰する眼で […]
今日も一日歩き疲れた。藤の花の重たくゆったりとした香りに気づき、空を見上げる。そろそろ今夜の宿を求めなくてはならない。歩き疲れたことはもちろんだが、春の陽気をたっぷりと身体が吸い込んで、「くたびれ」ている。土も藤の花も人 […]
蝶が深い谷の上空を飛んでいる。高々と越えてはいるけれど、春の蝶だから風にあおられて右へ左へ心許ない飛び方を想像する。その心許なさが谷の深さをいっそう際だたせている。家業の医師を継がず放浪した石鼎の生き方も思い浮かべる。( […]
しゃぼんだまが垣根を越えて、輝きながらゆらゆらと向いの家へ入っていく。不思議と時間が引き延ばされて、そこに空白がうまれたかのように、時の長さを感じさせる。時間の進む速度が遅くなったかような感覚である。不器男の句の多くに、 […]
かねてより、蕉門十哲の筆頭のこの俳人を、わたしは、いぶかしんできた。さりながら,凡作の山を脇目にしつつも『猿蓑』序における「幻術」という言葉で詩の核心にせまろうとした志、これこそ現代俳人に欠損したものと感服せざるをえなか […]