2023年12月句会報告

ZOOM句会


郵便句会

大谷弘至主宰選

◎特選

餅花や洛の出店が世田ヶ谷に       田中尚子
引き寄せてポコと湯たんぽ母の音     西川東久
晴れの日は今日が限りぞ冬薔薇      春日美智子
地球上けんくわばかりや鴛鴦も      春日美智子
うろつきし上がり界隈絵双六       田中尚子
下手なりの思ひ出ありてスキー場     関君子
露の身の老いて寝顔の尊さよ       山下充子
伊勢海老のまたぐ朱の椀金の縁      西川東久
懐かしき手ざはり恋の歌かるた      白石勉

○入選

羽子板や目口あせしを役者振       白石勉
年用意カツ節削るお手伝ひ        関君子
丸石を据ゑて海豚の塚となし       上俊一
師走とてしがらみのなき朝欠伸      西川東久
パスを待つ人にバス来る雪げ道      梶原一美
鯛焼を懐炉代はりに帰宅かな       上俊一
鯛焼や無表情にて腹黒く         上俊一
浜焚火囲みし友ら今いかに        関君子
二人には過ぎたる御重年用意       加藤妙子
夜神楽も大団円や餅振舞         白石勉
龍の玉十歩に尽くる庭なれど       関君子
北下し押戸押されて開けられず      間静春
稽古納め残る紅葉を床に挿し       北野沙羅
電飾に浮き立つ世なり開戦日       加藤妙子
七度目の逆縁の忌や冬の虹        小島楓
つがひ蝶枯れし芙蓉の日溜りに      伊達公子
(文責氷室茉胡)               


深川句会(13日/15名)

大谷主宰 選

【特選】

安曇の瀬に見るまぼろしか網代守    篠原隆子
木と紙の家へようこそクリスマス    篠原隆子
眠る母ひと息ごとに淑気満つ      神谷宜行
東京は青き洞窟聖夜待つ       谷村和華子
洛中洛外金の雲間を初しぐれ      仲田寛子
母ゐればデパートめぐる師走かな    越智淳子
若冲の色に師走の錦かな        西川東久

【入選】

冬の日をひよいと蕪村の墓詣で     西川東久
望まねど延命地蔵拝む冬        城田容子
骨折の足にやさしや落葉道       城田容子
布袋腹たたけば淑気満つる音      城田容子
襖開き所作うつくしき女将かな     仲田寛子
わが月日資源ごみへと古暦       仲田寛子
搔き立てし榾火に浮かぶ君の顔     上 俊一
大榾火眉白くして立ち去りぬ      上 俊一
寒鮃上目遣ひがさだめにて       上 俊一
冬凪や春とみまがふ安房の海      上 俊一
印紙買ふ役所通ひも師走かな      越智淳子
谷戸の寺銀杏散るまま積るまま     金澤道子
帰り花この道行かば二月堂       金澤道子
一茶忌やわれも句を詠む娑婆遊び    石川桃瑪
ひそひそと話しては去る火事場跡    西川遊歩
除夜の鐘年打ちまたぎ列車ゆく     西川遊歩
飾り売りことしもここに同じ人     西川遊歩
よちよちと己が影連れ毛糸帽     谷村和華子
気嵐や潜みし龍の吐息とも      長野いづみ
ひよいひよいと煤けた顔でぼろ市へ   大場梅子
天上へ臼もとどろに餅つかん      園田靖彦
貼り足してだんだん小文字古日記    園田靖彦
全快や畳をかへて障子貼り       神谷宜行

第二句座 席題  (冬紅葉 ストール 初日記)

【特選】

取りおきの一句隆々新日記       園田靖彦
書き出しは八十をことほぎ新日記    園田靖彦
病み上がり急くなと掛けるショールかな 神谷宜行

【入選】

夫がゐて我ゐる幸や初日記       菅谷和子
母あらばショールは真知子巻ならん   石川桃瑪
大らかな一句したため初日記      西川遊歩
第三楽章ストール膝にたたまれて   谷村和華子
冬紅葉そろそろ鯉はゑさ食べず     城田容子
売るほどのショールの眠る箪笥かな   大場梅子

(篠原隆子記)


鎌倉吟行句会(3日、覚園寺、8名。)

今年最後の句会は、12月の恒例で覚園寺。
鎌倉でも比較的奥まっているので人は少なめです。寺指定の「一方通行」で境内を巡りました。

第一句座:吟行句・雑詠句7句出句、5句選      
山茶花や戦のあともまた戦     英樹
今年またこの寺のこの冬紅葉    道子    
呼びかはし樹々ゆく鳥も冬用意   美津子 
鎌倉のお屋敷広し日向ぼこ     益美  
歳末や凛と二人はジェンダーレス  恵美子
人間近し鎌倉仏冬ぬくし      淳子
さよならは日を纏ひたり銀杏散る  和華子
終ひ紅葉案内の僧は声ゆたか    はるみ

第二句座:席題「鋤焼」「土竜打」で3句出句、3句選
すき焼やまづ父が出す鉄の鍋    淳子    
すき焼といへばこの店縄のれん   英樹    
手加減を知らぬ子どもら土竜打   道子    
すきやき肉包みし折ぎの柾目かな  はるみ
穴見つけはしやぐ子どもよ土竜打  益美
土竜おどせようちん子もよそん子も 美津子
並び食ふすき焼うれし店狭し    恵美子
呪ひも子らははしやぎて土竜打つ  和華子

(長井はるみ記)


東京・神奈川吟行句会(9日、浅草界隈、11名)

師走の浅草寺周辺を吟行しました。
東京・神奈川吟行句会として最後となりましたが
今まで支えてくださった皆様に感謝を申し上げます。

匂ひたつ切山椒のやうな句を    梅子
餅搗くやささへてくれしみなさまに 梅子
餅花の空の向かうに戦火あり    千方
いつの日か辞表を出して鯛焼屋   千方
観音にすがる日ありき冬桜     純子
古暦謎の印のひと日あり      純子
冬帽子独りぼつちが好きなふり   道子
はからずも漱石忌なり終ひ句座   道子
大年の御堂の奥に龍眠る      宣行
着ぶくれの人形焼がぽんと出て   宣行
ほらここも列よ師走の浅草よ    政治
母と来し匂ひ師走の銀座線     政治
切山椒下げて前ゆく万太郎     和子
ひざかけや母と息子の人力車    和子
皆で来てひとりひとりの冬桜    秀子
山茶花や娘盛りの車引       秀子
はとバスの運ぶ異国語十二月    佳余子
竹馬の子らはいづこへ花川戸    佳余子
一枝の名残りうつくし冬ざくら   侑子
冬もみぢ惜しみつ句会解散す    侑子
煤逃げの言ひ訳として切山椒    京子
猿回し始まりはまだ日向ぼこ    京子

(幹事 神谷宣行・大場梅子記)


埼玉句会(24日、埼玉会館、5名)

良きしらせ悪しき知らせも十二月    市人
翔平は赤から青へ去年今年
借金を拝み倒すも年用意        靖彦
何ごとも問はず語らず寝正月
へそくりを確と抱きしめ寝正月     つねお
駄句の山枕としたり寝正月
トットちやん九十歳に返り花       すみえ
グーパーと癒えし手ひらく冬至風呂
ひととせを振り返りゐるおでん酒    ゆき
おでん酒夫婦の契り深くあれ

(萬燈ゆき記)


愛知吟行句会(14日 名古屋市鶴舞公園)

十二月半ばとは思えないほどの暖かくて穏やかな日となった。冬のバラ、枯葉の残るプラタナス、池の鴨等をのんびり見て、公会堂地下の喫茶店でランチ、句会。

りんりんと濁世の空を冬さうび   恵美子
大木の根方の一葉紅葉かな     春日美智子 
駅出でて真つ先に逢ふ冬紅葉    楓
ようやつと黄落はじむ柳かな    沙羅
鳩の歩も急ぎ足なる年の暮     正博
水音をときどきたてて冬の鯉    通江
鈴掛の実は凍て空の涙かな     雄二
(稲垣雄二記)


岐阜句会(21日 岐阜市西部福祉会館 5名)> 

第一句座 兼題(冬木立、ゆず湯、雪囲)

葉を落し我にも似たる冬木かな   上松美智子
立ち往生せぬやう日本雪囲     春日美智子
柚子風呂に香りの足らず手ではじく 通江
花用意してゐる桜冬木立      沙羅
白峰の家ことごとく雪囲      恵美子 

第二句座

子供等らによき未来あれ葛湯ふく  上松美智子
風と来て我を誘ふや尉鶲      春日美智子
明け方の京都灰色蕪村の忌     通江
ウクライナ忘るるなかれ冬至粥   沙羅
正月や青菜を刻む音やさし     恵美子
(梅田恵美子記)


京都句会

古志京都句会12月は、予定どおり通信句会と対面句会を実施しました。 
来年も、毎月、通信句会と対面句会の二本立てで行う予定です。対面句会は、第3水曜日午後1時からこどもみらい館で実施予定。 

12月通信句会は夏雲システムを利用して実施。主宰のブログ(酉の市)、竹下米花さん作の絵手紙(ラディッシュ)、そして「ラディッシュ、大根、蕪」を解説したサイト、以上からの連想句4句以上を含め、8句投句、選は特選1句、入選7句で行いました。13名参加。

粕汁に能登の荒ぶる鰤の粗       悦子
地下鉄の改札通る大熊手        雄二
北山の白く烟りて蕪剥く        佳澄
こりこりと海鼠の憂さを食ふてやる   忠雄
かんかんのう見せてやらうかふくと汁  米花
一年の混沌くべて焚火かな       りえこ
しがみつくこの手いつまで七五三    美恵子
どこやらに居さうなおかめ買ひにけり  久美
みな廻る柚子湯の柚子も子どもらも   みりん
「特選」を掻っ込むといふ熊手買ふ   初男
酉の市人出の裏の路地さびし      淳子
新鮮な心大事に老いの春        美那子
怖きものなし八十のふくと汁      茉胡

 対面句会は、12月20日(水)こどもみらい館で実施しました。第1句座5句出句、6句選句、第2句座6句出句(席題「冬椿」「冬かもめ」「育」「青」「暦売」「読初」)7句選。6名参加。

たらればのがんじがらめや薬喰ひ    りえこ
塹壕で旧約聖書読みはじめ
社会鍋底に戦争潜みをり        洋子
冬苺育児休暇はあと三日
文旦剥く果肉琥珀に透きとほり     みりん
うつすらと怒りに似たり冬椿
あるだけの酒なみなみと常夜鍋     いほり
こんな日に猫は逝きけり冬青空
白菜を洗ふ女の尻丸し         佳澄
冬椿跡継ぎおらぬ寺の庭
どうマフラー巻いても似合ふ貴方かな  茉胡
役者の名連呼し暦売りにけり

 通信句会、対面句会とも参加希望の方は、いずれも氷室茉胡宛の次のメールアドレス、あるいは古志誌上に掲載の電話でご連絡下さい。  メルアド:mako10himu6@nifty.com    
(氷室茉胡記)


奈良句会(26日 zoom句会 11名)

葉牡丹の渦ほどあるか脳の皺      まこ
数へ日やゆつくりと豆煮含めて    美那子
赤ん坊のひときは美しきクリスマス  淳子
いつまでも拘る一句冬籠り      悦子
馥郁と柚子ただよへり終ひ風呂    久美
冬うららシニアで席を譲り合ひ    正子
病室の祖母の手さする春着かな    雄二
書初の龍動くごと墨にじむ      忠雄
書初めや裾をひろげて三輪の山    豊
春着とす花の刺繍のカーディガン   まち
媼召す疋田鹿子の春着かな      りえこ
(喜田りえこ記) 


大阪句会

メール句会  雑詠7句出句、5句選

いつ爆ぜる青き毬栗青き地球     久美
時計台の文字くっきりと冬に入る   豊
凩一号蝦蟇口の中も吹く       百合子
あたたかやもふもふといふオノマトペ みつこ
わが町の小春のモスクシナゴーグ   歌子
少しずつ消えゆく森や木菟の声    りえこ
枯れるだけ枯れて明るし蘆の水    陽子
風呂吹や思はず本音洩らしたる    茉胡
初霜やもう陽のなかに消えてをり   泰子
熊野灘の風の冷たさ干秋刀魚     洋子
柚子湯して母のお腹にいる気分    誠
友送る冬夕焼の消へぬ間に      美那子
雪虫のお先にとかな露天の湯     美栄子

Zoom席題句会  席題(初鴉・初景色)3句出句、3句選

厨に立つ我が妻も初景色       豊
父母のゐさうな故郷初景色      洋子
かすむ眼の整うていく初景色     百合子
ガザの子に笑顔戻るを初景色     りえこ
初景色三川合流天王山        泰子
杖と恃む夫ゐる安堵初景色      美栄子
翠さす羽ひろげたり初鴉       久美
呼び交ひて碧空をゆく初鴉      美那子
初鴉太陽の影浴びてをり       誠
初鴉三声は新年おめでたう      歌子
初鴉一声ありぬわが屋根に      みつこ
(木下洋子記)


松山句会(21日 メール句会 9名)

兼題:蜜柑、寒暮、青女、忘年会、風邪  5句出句5句選

幼子の寝息を聞きに来る青女     紫春
いつしかに風邪の子供は腕の中    真樹子
ほろ酔ひて家路に急ぐ寒暮かな    夕未子 
お蜜柑と呼ぶ隣人の懐かしき     真奈美
人肌の燗ひとり酌む寒暮かな     伊都夫
寒暮路やおでん漂い家間近      博山
いつ来ても海きららかよみかん山   陽市
首すじを撫でて過ぎゆく風邪の神   まこと 
にしん漬け上々の出来今朝の霜    真樹子 
喧騒を忘れる足湯寒暮かな      真奈美 
昭和歌唄ふてみたき年暮るる     伊都夫 
陽の光零れはじけて島みかん     紫春
星もまた孤独を深め冬の暮      まこと     
(木下まこと記)


福岡句会(16日、あいれふ)

第一句座

妻にある旧姓の日々冬すみれ     民也
繋ぐ手の心強さよ冬の星       久子
湯気立てて観音の顔丸くなり     龍梅 
立ち止まるとき足許にある寒さ    和子
冬の雷英語にいくつ破裂音      國光
柚子搾る柳葉魚の尾にも頭にも    伸一
猫がまだゐさうな出窓冬薔薇     幸子
討ち入りの日を忘れたる紙面かな   悠
コロナなどなかつたやうに年忘れ   真知子 

第二句座(席題:風邪、枯木)

吾もいつか枯木の山の一樹かな    國光
風邪ひけば大歳時記を枕にす     民也
風邪なんて寝れば治ると言われしが  和子
枯木立故人の面影なりしかな     龍梅
触れてみし枯木入学時の桜      久子
枯木灘初めて気づく空のあり     悠
風邪の子の次々せがむ絵本かな    真知子
(斉藤真知子記)


長崎句会(22日 メール句会 9名) 

最期まで我を通してや冬北斗     瑠衣
廃業の小さき貼り紙十二月      美智子
着ぶくれてなほ世の中の寒きこと   睦美
冬日和まだ二回目のウォーキング   玲子
老夫婦一玉を分け晦日蕎麦      順子
冬麗みなヒーローヒロイン湘南マラソン まり子
銀杏散るカフェのテラスに友はなく  文
出不精の老いていよいよ竈猫     弘美
お薬はあれよこれよと蜜柑剥く    なおよ

題詠(年忘れ、裸木)

枯欅えんえんと並む律律しさよ    まり子
吾はバスを待つ裸木は天を刺す    玲子
終ひ方ばかりのはなし忘年会     なおよ
裸木となりて老木清々と       睦美
下戸なれど笑い上戸の忘年会     順子
裸木や窓に戯るヘッドライト     弘美
いそいそと業務終了忘年会      美智子
もの忘れなんぞ笑うて年忘れ     文
(米山瑠衣記)

 

 

 

     

                    

 

 

 

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