2023年11月句会報告

Zoom句会


郵便句会

大谷弘至主宰選

◎特選

今年米こころを込めて塩むすび      関君子
段畑は天まで蜜柑有田川         白石勉
弁当を一つ買ひ来る道寒き        土筆のぶ子
枯るるより食はれてしまへ蟷螂よ     上俊一
霜菊にあかねさす朝あといくつ      西川東久
狼になりて老いぼれ犬が吠ゆ       上俊一
生り年のいちじく残し転居かな      山下充子
すがる虫心做しかや吾を呼ぶ       神永秀郎

○入選

間素なる大社のお宿神の旅        田中尚子
散り尽す白樺紅葉昨夜の雨        梶原一美
大学をやめて浪人小鳥来る        伊達公子
部屋よりも外はぬくもり冬菫       春日美智子
歯医者から鯣はだめと云はれ冬      上俊一
大根干す風は美濃から伊吹から      小島楓
炉開や十能知らぬ部員らよ        北野沙羅
足軽も殿もうつろや菊まとひ       小島楓
屏風絵を抜けしごと雉谿紅葉       北野沙羅
冬立つ日吾子急病と詐欺電話       伊達公子
広芝の秋めく色や人まばら        土筆のぶ子
リスたちはみんな名人くるみ割り     関君子
飽食の世や痩せこけの大羆        白石勉
清盛の額のやうなる榠樝の実       北野沙羅
茸飯八甲田おろしとふ酒を        加藤妙子
み仏に一番咲きの杜鵑草         山下充子
お目当ての武将は留守か菊人形      小島楓
独り居の家の寒さに籠り居て       土筆のぶ子
旅の果て岩木山より秋没日        加藤妙子
姉に抱かれ夜の火事見し遠き冬      伊達公子
(氷室茉胡記)


深川句会(8日/16名)

大谷主宰 選

第一句座

【特選】

木枯しや人はどこまで残虐に     大場梅子
ひもじくて熊穴にまだ入れずに    大場梅子
背中にも腹にも懐炉いざ探鳥     金澤道子
練炭の炎や青き州の屋台       西川東久
含羞といふや龍太の懐手       西川東久
轟音の冬の宇宙やMRI       吉田順子
良性の診断祝ふ新酒かな       吉田順子
拾得の箒つくらん棕櫚剥がん     篠原隆子
冬晴やお迎へあらば留守と言へ    城田容子
皺々に縮むめでたさ干大根      上 俊一

【入選】

椋鳥もはやす口切日和かな       篠原隆子
丸窓をひとつ心に冬ごもり       篠原隆子
鮭のぼる森の匂ひの水もとめ      吉田順子
耳垂れや検査検査の暮の秋       吉田順子
オホーツク冬の秋刀魚が入れ食ひぞ   仲田寛子
観世音海光の名の寺は秋        越智淳子
胡桃割る旅の記憶をこぼしつつ     西川遊歩
捨案山子話相手は赤蜻蛉       長野いづみ
蓑虫よ日に月に何語ろうて      長野いづみ
はいはいとぬつと顔出す柿すだれ    大場梅子
伊賀越えの蓑虫やがて天下取り     大場梅子
不漁の川あさる大熊や瘦せ細り     神谷宜行
思ひこめペルーの手話や木の実降る   神谷宜行
薪を足す風呂の焚口冬に入る      石川桃瑪
しぐれ虹保険見直し話せる間      石川桃瑪
これほどに乾びるものか鵙の贄     金澤道子
鍋焼きや両国橋に灯がともる      菅谷和子
忽然と懸大根の一夜城         上 俊一
こじあけて月のしづくを牡蠣の殻    園田靖彦
掌に取りて赤のかんばせ柿落葉     園田靖彦

第二句座  席題 (冬茜 切干 マスク)

【特選】 

目力の太郎に花子マスクして     長野いづみ
切干や婆達者らし手も口も       上 俊一
あれほどがこれほどとなる切り干よ   園田靖彦
人の世の温みしみたる切り干よ     神谷宜行
相老いて冬の夕焼のただ中に      篠原隆子

【入選】

切干や家事は地獄か極楽か      城田容子
憂きころのアベノマスクといふ遺物  城田容子
じぶじぶと切干し煮ゆる匂ひかな   金澤道子
災厄のマスクと戦火捨てばやと    神谷宜行
マスクしてまなじりの皺優しかり  谷村和華子
信濃路や神ゐますかに冬夕焼     篠原隆子

 (篠原隆子 記)


東京・神奈川吟行句会(11日、深大寺、8名)

カリオンは天の旋律冬に入る   宣行
わが娘に恋せし父や七五三    宣行
白鳳の御世から今へ返り花    梅子
かすれゆく借命の文字霜の声   梅子
温室はなないろ浄土水蓮花    秀子
今年また十一月の深大寺     秀子
一つ言ふ度に頷く七五三     政治
波郷忌や眼鏡に溜まる雨滴    政治
冬帝が回り道してやつて来た   佳余子
無患子の実の落つる頃波郷の忌  佳余子
七五三手つなぐ父も誇らしげ   和子
髪に降る落葉をのせしまま来たる 和子
この度は波郷の墓に柿もなし   侑子
温室のスイレン七色小春かな   侑子
冬ざれや開山堂の石錆びて    京子
菊厚づくり頭さはつてみたきかな 京子

(大場梅子記)


埼玉句会(26日、埼玉会館、5名)

木綿ごし絹ごし冬に入りにけり     市人
波郷忌やわが八十の大くさめ
この国の政り動かず山眠る       靖彦
この国は第九第九の師走かな
はるかなる海を蔵して山眠る      宣行
極月や死にゆく人も走るかに
河豚喰うてあの世の話佳境なり    つねお
河豚汁や老僧まづは南無阿弥陀
寅さんの帰京のこゑや河豚汁     ゆき
河豚刺の乾ききつたるさみしさよ

(萬燈ゆき記)


鎌倉吟行句会(5日/長谷寺/8名)

この日は各自で吟行し、集合は句会場でした。

第一句座:吟行句・雑詠句
年々に女磨きぬ式部の実      英樹      
おほ空を背負ふ大仏秋深む     和華子    
鎌倉の海は明るし鳥渡る      道子      
かたまつてあつたかさうや枇杷の花 美津子
たわわなり庭の蜜柑のすつぱさよ  益美
秋空を面白くすか鳶数羽      淳子
目鼻立ちそつくり親娘柿三つ    侑子
十一月倫敦からと旅の人      恵美子

第二句座:席題「枯葉」「立冬」「去年今年」
鞄に結ふ赤きスカーフけさの秋   美津子
さてもさても生き抜く力去年今年  益美
懐かしき人の匂ひの枯葉かな    英樹
今朝冬の眼前広ぐ鳥海山      恵美子
今朝の冬ひかがみ張らし絞る弓   和華子
つづきをり疫禍戦争去年今年    淳子
学校を廻りて落葉落葉かな     侑子
逗子葉山近くに見ゆる冬来る    道子

幹事が欠席で、那珂・金澤両氏に進行・取り纏めをしていただきました。
有り難うございます。

(長井はるみ記)


愛知吟行句会(9日、岐阜公園)

金華山(岐阜城)の麓に広がる公園の菊人形・菊花展を鑑賞。各種、色とりどりの菊の間に、菊人形が展示してあり、十一月とは思えない穏やかな日差しのもと、ゆっくりと見ることができた。

たつぷりと今朝の水やり菊花展    恵美子
鵜舟揺れ菊人形も揺れをりて     春日美智子 
武器持たぬ我らに杖を今朝の冬    楓
菊人形菊の体をいとしめり      通江
乾坤に菊大輪の孤独あり       雄二
(稲垣雄二記)


岐阜句会(16日 岐阜市西部福祉会館 4名) 

第一句座 兼題(寄せ鍋、返り花、時雨)

寄せ鍋や参加者減りしクラス会     上松美智子
時雨るるや竹藪いよよ深緑       春日美智子
返り花小さな命笑ひをり        通江
寄せ鍋や急に冷たき風の日は      沙羅
色やさし風が残せし返り花       恵美子 

第二句座

戦火経し銀杏の実を拾ひをり      上松美智子
死してなほ怒り眼やいぼむしり     春日美智子
境内を走り回る子七五三        通江
夫と聞く古今の講座時雨かな      沙羅
庭仕事暮るる速さや冬隣        恵美子
(梅田恵美子記)


京都句会

 古志京都句会11月は、予定どおり通信句会と対面句会を実施しました。
 来月からも、毎月、通信句会と対面句会の二本立てで行う予定です。対面句会は、第3水曜日午後1時からこどもみらい館で実施予定。 

 11月通信句会は夏雲システムを利用して実施。主宰のブログ(蘆の穂)、越智淳子さんの「きごさいBASE」の「今夜はご馳走」欄の「十二月:すき焼き」と「十一月:治部煮」、そして竹下米花さん作の絵手紙(青梗菜&あんかけ)からの連想句4句以上を含め、8句投句、選は特選1句、入選7句で行いました。14名参加。

牛の子の命を受くる今年藁       雄二
故郷を離れて妻の治部煮かな      美那子
母の名を赤子の足に冬温し       英二
すき焼きや世界の難民一億人      りえこ
一山の紅葉きはまる光悦寺       久美
平らげし治部煮の底に主家の紋     米花
山茶花や隠し事なき身の軽さ      佳澄
香林坊とつぷり暮れて治部煮かな    忠雄
つつましき二人の暮らしや蘆の花    初男
うつくしき嘘ひとつまぜ初しぐれ    みりん
柚みそに添へて送らん終ひ茄子     美恵子
すき焼きや心斎橋を酔ひ心地      淳子
放棄田が葦の穂絮を一斉に       嘉子
今日は娘の彼氏の来る日鋤焼に     茉胡

 対面句会は、11月15日(水)こどもみらい館で実施しました。第1句座5句出句、5句選句、第2句座8句出句(席題「短日」「梟」「縄跳び」「小春」「蓮根掘る」「火鉢」「鼬」「万両」)7句選。4名参加。

神無月神のいくさの三つ巴       りえこ
権妻が起請文焼く長火鉢
鯛せんべいパリリと薄し冬に入る    いほり
真実はあるやなしやら蓮根掘る
AIに句を選ばれてくさめかな     洋子
息吸うて大縄跳の輪の中へ
譲渡会成就の猫や小六月        茉胡
梟や賢者はなべて無口なる

 通信句会、対面句会とも参加希望の方は、いずれも氷室茉胡宛の次のメールアドレス、あるいは古志誌上に掲載の電話でご連絡下さい。 メルアド:mako10himu6@nifty.com  
(氷室茉胡記)


奈良句会(11名)

こんばんは破顔一笑雪明り       淳子
いーしやーと間延びの声や焼芋屋    まち
雪の夜や雪降る音が胸の中       美那子
雪国の言葉とつとつあたたかし     洋子
炉開きの老母いそいそ動きけり     正子
熱燗や幾たび聞きし武勇伝       忠雄
ふくよかに御蓋山の冬紅葉       豊
尻もちの穴を加へて大根引       まこ
二上のことに女岳の暮れやすし     久美
冬近しメタセコイアの大火炎      雄二
焼芋を頬張りて読む宇治十帖      りえこ
(喜田りえこ記)


大阪句会

メール句会(雑詠7句出句、5句選)

朝寝して昼寝してはや寝覚月      一爽
飛べば草にとまれば風に飛蝗かな    久美
チンペイもモンタも黄泉や秋果つる   りえこ
大根蒔く軽トラの中に子は眠り     誠
暫くはひとつ年下柿熟るる       百合子
白鷺の影すべりゆく秋の水       豊
豊秋の熊野三山闇育つ         陽子
神農の虎の行き交ふ道修町       美那子
ハロウィンや姫になりたき娘たち    みつこ
余生とはいつからのこと秋深む     歌子
秋深し頬杖下の二重あご        美栄子
光悦垣ぐいと曲がりて秋深し      茉胡
やはらかき炎のせたる紅葉散る     みりん
戦争はいつ果てるのか冬の虫      洋子
火の恋しコンビニ浮かぶ夜の街     泰子

Zoom席題句会 席題(沢庵・山茶花)3句出句、3句選

山茶花のつぼみ多きを吉として     泰子
父の忌や白山茶花の散る真昼      歌子
山茶花や利休の茶室しずもりて     豊
山茶花の咲いて散りゆく庵かな     洋子
よく喋る坊守さざんくわ花盛り     久美
大いなる沢庵のあり箸二膳       みつこ
水上がるまでの夜毎の沢庵桶      美那子
ばりばりと沢庵まるごとかじりけり   誠
碗拭ふたくあんの香の湯の余韻     百合子
(木下洋子記)


松山句会(24日 メール句会 10名)

兼題:秋刀魚、銀杏、刈田、秋寂、新酒  5句出句5句選

あらぬ方へ秋刀魚のそれし地球かな   真樹子 
秋寂びて病院行きのバスを待つ     和弘
銀杏の一つ二つを旨しとす       夕未子
アーアーア二羽の烏と夕刈田      真奈美
老残を生き抜くための新酒かな     紫春
がん告知されバスの外秋寂ぶし     薫
新酒会先ずは背筋を伸ばしけり     まさし
ことごとく視野の外へと銀杏散る    陽市 
八重垣の奥で醸せし新走り       まこと 
マンモスの親子も遊ぶ刈田かな     和弘  
秋寂びの旅の土産や田舎そば      真樹子
ふるさとの銀杏拾ひし神社かな     薫  
出来栄えもめでためでたの新酒かな   和弘 
剥落の毘沙門天に秋寂びて       まこと 
白鷺や刈田に下りし月明り       夕未子  
秋寂びや四万十川も涸れてをり     紫春
並木通りの銀杏はみんな上向ひて    真奈美 
大刈田氷のやうな星のでて       まこと 
(木下まこと記)


福岡句会(25日 あいれふ)

第一句座

芋の露ちりぢりとなりまた一つ     民也
籾殻を覚えてゐる手冬林檎       幸子
小春日やこの女医さんの待たせ癖    國光
蜘蛛の骸糸に垂れゐる冬日和      悠
一茶の忌日々好日と膝の猫       和子
玄界の先は大陸寒昴          博人
葉一枚添へて甘柿供へけり       伸一
終はるまで男らの黙注連作       真知子

第二句座(席題、冬紅葉、焚火、とろろ汁)

碑の文字も古りたり冬紅葉       民也
四、五回は噛んでもみたりとろろ汁   國光
老妻の髪の整ふ冬紅葉         悠
冬紅葉JAZZの流るる茶店かな     博人
正面に知らぬ人ゐる焚火かな      真知子
(斉藤真知子記)


長崎句会(24日 まり庵 9名 うち3名はメールによる参加)

第一句座 当季雑詠

車椅子押して回廊小春凪        なおよ
餌の無き熊に脅えつ冬に入る      順子
小春日和デーツ食み聞くガザの声    文
渓紅葉大吊り橋の真中なり       まり子
頬づえを付けば菩薩の秋思かな     美智子
不揃いのステップ落ち葉を辿りつつ   玲子
河豚汁や先輩句友大往生        弘美
トロ箱にグジのまなこの並びをる    睦美
縄なふや押し合ひ圧しあひ猫つぐら   瑠衣

第二句座 凩、枯葉

木枯らしに負けんわいわい鬼ごつこ   美智子
凩を連れ届きたり干し魚        なおよ
枯葉なれど味噌乗せ役に立て朴葉    順子
うら返る枯葉や神のひと息で      玲子
先行きて子の踏みしだく枯葉道     文
凩や踏んばってをり橋の上       まり子
枯葉落つ音と気配を踏みしめて     弘美
凩の道を通すや二月堂         睦美
凩や栗鼠はまん丸巣ごもりて      瑠衣
(ももたなおよ記)


                    

 

 

 

 

 

 

 

 

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