2022年10月句会報告

第32回 YouTube句会(22日 43名)

大谷主宰選

【特選】 

怡土の風はるかに綿の吹き初めて     篠原隆子
つめたさのあれは鮭釣る人の灯か     丹野麻衣子
秋澄むやチェロをふるはす傘寿の手    長野いづみ
金婚や葡萄酒醸すごとき日々       矢野京子
鶏頭は未完の花や子規もまた       稲垣雄二
弾道ぞ鬼の子の泣くこの上も       イーブン美奈子
太刀魚や跳ねて泉州やんちや顔      喜田りえこ

【入選】

良く研げて月もうつしぬ鎌祝       菅谷和子
しがらみのこの世ひらひら鯊を釣る    西川遊歩
角切会老勢子は目で追ひ詰める      田村史生
ベランダの小さき寄せ植ゑ紅葉れり    三角逸郎
蜂の子は飛ぶこともなく食はれけり    大平佳余子
柚子摘むや大きな棘と闘うて       木下洋子
庭畑やばつたと見れば踏み潰し      米山瑠衣
からすみを一切れ酒は燗をせよ      片山ひろし
免許返上けふで仕舞の紅葉坂       三角逸郎
菊一鉢置いてもさびし狭庭かな      那珂侑子
にはとりが庭先歩く鎌祝         神戸秀子
初鮭や鋭き顎であぎとへる        丹野麻衣子
水澄むや一行増えし処方箋        奈良握
わが灘の天下一品鰯焼く         園田靖彦
月光の中やべつたら提げ帰る       西川遊歩
余呉に青一つ点じて初鴨よ        齋藤嘉子
鶏頭の重なり厚き真くれなゐ       越智淳子
始まりは銀河の雫山は秋         野村桂久
(記:丹野麻衣子)


Zoom句会


郵便句会

大谷弘至主宰選

◎特選
落花生の殻をはたいて立ち去りぬ    上俊一
行く秋や短き詩の肝所         鈴木千恵子
つゆ草の花にわびては草と引く     梶原夕未子
この先はたぬきの国ぞ濃竜胆      小島楓

○入選
どの風も木犀の香をつれて来る     神谷和子
楽しげに鳴いてがちやがちや明けにけり 山下充子
ホームにコスモス咲かせ駅長退職す   関君子
校庭の千草を挿して野点席       北野沙羅
秋の旅友の郷里のおから寿司      伊達公子
せつかちに枯葉の色のばつたかな    上俊一
敗荷の混沌の中鯉よぎる        水谷比嵯代
月の夜の夫の寝顔尊くて        梶原夕未子
バス停の椅子濡れてをり赤とんぼ    西川東久
小菊どち順に咲きませ供華とせん    白石勉
鎌切りの気骨がほしやおのれにも    春日美智子
大霜のとけて雫す宮庇         梶原一美
(氷室茉胡記)                   


深川句会(12日 18名)

大谷主宰選

第1句座
【特選】
鬼怒川の鬼を眠らせ新走り      大場梅子
ゆめに描く与謝はとこしへ竹の春   篠原隆子
野面積む城を守らん松手入れ     中田寛子
もう猫を叱ることなき障子貼る    中田寛子
痩せ秋刀魚精一杯の煙立て      上 俊一
窓はみな大川に向き秋簾       金澤道子
代々の鎌は宝ぞ鎌祝ひ        大場梅子
海人も柿を干したり時化もよひ    上 俊一
すすきの穂今日は開かず雨模様    原 京子
 【入選】
鳴子引く米のアジアのわれらかな   西川遊歩
良く歩き足をほめたや草紅葉     菅谷和子
玉虫の骸箪笥の底に秋        石川桃瑪
花屑の薫るよどこの金木犀     丹野麻衣子
芋虫のほがらほがらと急ぐ句座    西川遊歩
いにしへの銀の馬車道芒道      原 京子
一夕を栃尾の人とぬくめ酒      篠原隆子
山猿にけふもねらはれ吊し柿     大場梅子
わが足の機嫌上々大花野       金澤道子
腹出しの子らはいづこへ曼珠沙華   大場梅子
よく香るすだちの箱を文入れに   丹野麻衣子
林檎むく甘え駆け来る子を膝へ   谷村和華子

第2句座 席題 (銀杏 蚯蚓鳴く 暮の秋)
【特選】
銀杏にかぶれてはれて我が手かな   菅谷和子
蚯蚓一匹恋の大地に頻り鳴く     神谷宣行
首塚は酒吞童子ぞ暮の秋       石川桃瑪
スマートフォン画面さぐらば蚯蚓鳴く 石川桃瑪
【入選】
本当に泣きたきは我蚯蚓鳴く     原 京子
職退いてけふも銀杏拾ひへと     大場梅子
好きな子の窓に銀杏投げつける    園田靖彦

(篠原隆子記)


鎌倉吟行句会(2日、大路ビル・カルチャースペース鎌倉、7人)

3ヶ月ぶりの句会。爽やかな秋空。江ノ電で稲村ヶ崎へ。午前の早い時間にはサシバの渡りが見られた由。稲村ヶ崎公園は、思いがけずも「なみおと盆踊り祭2022 in 稲村ケ崎」で賑やか。ライブやフードカー。

第一句座:吟行句・雑詠句
目つむりて虫聴く顔となりにけり  道子
ぐんぐんと空のまほらへ鷹柱    美津子  
鷹百羽渡るたびごと乾杯す     侑子    
風よりも白き稲村ヶ崎かな     英樹   
画布ま青線を一本秋の朝      和華子    
あの戦知らんふりする秋の海    恵美子
ドローンの飛んではじまる秋祭   はるみ

第二句座:席題「夜長」「猿」  
長き夜を長しと思ふ齢かな     道子    
樹々渡る猿のこゑか秋風か     美津子   
恋文は今宵寝かさむ長き夜     和華子   
豊の秋白猿名乗る團十郎      英樹     
息子より電話うれしき夜長かな   侑子  
足元のマフィンすやすや夜長かな  恵美子 
秋うらら猿山の猿人に飽き     はるみ

(長井はるみ記)


東京神奈川吟行句会(8日、旧古河庭園、5名)

愛誓ふ二人に秋の薔薇咲きぬ      大場梅子
句友いま戦友となり秋深む
手を出すな魔性の赤き茸には       園田靖彦
ひとつかみ君に進ぜんあぶり椎
椎の実の飛んで弾けて地のしづか    大平佳余子
秋の炉を燃やす二人の炎かな
洋館にガレのランプか秋灯         菅谷和子
古き世の治兵衛の滝も秋のこゑ
椎の実や老いて心は少年に        神谷宣行
秋薔薇花弁地獄へ落つる蟻

第二句座 (胡桃、猪、松茸)
いのししを退治し恋が生まれたり     菅谷和子
胡桃割るたびに生まるる物語
木曾のなあ木曾の松茸馳走せん     大場梅子
名人と云はれ松茸長者かな
縄文の村は豊穣くるみ割る         大平佳余子
このあたり安達ケ原や鬼ぐるみ
山ひとつ買うて松茸ざくざくと        神谷宣行
水汲みの我にのしのし猪の影
真夜中の泥棒ごそとまつたけを      園田靖彦
輪舞から二人抜け出しくるみ割り
(神谷宣行記)


埼玉句会(23日、埼玉会館、6名)

かにクリームコロッケ秋惜しみつつ  市人
デジタルに取り残されておでん酒
草の戸に湯気のわき立つ今朝の冬   靖彦
夜学生師に取り入りてたぬきそば
ゆく秋やめくるめく恋せぬうちに    宜行
天国へ全員集合おでん酒
値段などどうでもよろし初秋刀魚  つねお
居酒屋に大東京の秋惜しむ
国境の島をはるかに豊の秋     すみえ
鎌倉殿一の人気や菊人形
核戦争気候変動蛇穴に       ゆき
残虐は進化のしわざ蛇穴に
(萬燈ゆき記)


愛知吟行句会(13日 名古屋市東山動植物園)

薄曇りの穏やかな秋空の下、園の入口に集合。6月に象の赤ちゃんが生まれており、入場券購入にも列ができていた。子供たちの声の中、犀、象、キリンなどを見て、無料休憩所で昼食、その後句会。

シャワー浴び犀の瞑想秋暑し    恵美子
孤児院の象の鳴き声零余子かな   春日美智子 
赤まんま狸の道を辿りつつ     楓
充ち足りた顔のライオン昼寝覚   沙羅
子供らはレッサーパンダ秋うらら  正博
しま馬のおしりプルルン萩の花   通江
犀の耳時に動くや秋静か      雄二
(稲垣雄二記)


岐阜句会(27日 岐阜市西部福祉会館 4名)

第1句座 兼題(衣被,夜寒、鹿)
あちこちに畑の捨てられ衣被    春日美智子
声色で絵本読みやる夜寒かな    沙羅
寝返りし時計確かむ夜寒かな    上松美智子 
きぬかづき今日の日の色してをりぬ 通江
かもしかや老いて淋しき二つの眼  恵美子

第2句座 当季雑詠
露けしやあさぎまだらはまだ来ぬか 春日美智子 
秋蝶も恋をするらんもつれ飛ぶ   沙羅
秋日和庭師三人来てをりぬ     上松美智子
コスモスや秋はどこかがざはめきて 通江
冬はじめこぼれ種から二つの芽   恵美子
(梅田恵美子記) 


京都句会

古志京都句会、10月はいつものとおり、通信句会と対面句会を実施しました。来月からも、毎月、通信句会と対面句会の二本立てで行う予定です。対面句会は、第3水曜日午後1時からこどもみらい館で実施予定です。

10月通信句会は夏雲システムを利用して実施。事前に送った初男さんの写真と文章(初男さんが体験された奥の細道を巡る旅のシリーズ第6弾、種の浜)、そして米花さん作の絵手紙(林檎)からの連想句4句以上を含め,8句投句,選は特選1句,入選7句で行いました。12名参加。結果は次のとおりです。

おろおろと林檎をするや熱の子に    美那子
翁追ふ旅人ひとり初しぐれ       忠雄
まづ父の破顔に供ふ新走り       雄二
鶴亀を謡ふさび声秋しんしん      りえこ
深酔ひも旅の仕上げや萩日和      美恵子
鰯雲旅の心のまたきざし        英二
大空を抱く形に林檎の木        嘉子
秋高し栗毛に生まれ草を食む      久美
しろがねの髪へ紅差す萩の塵      陽子
後の月どれが翁の小貝なる       米花
烏賊火燃ゆ原発近き種の浜       初男
拾ひたるますほの小貝秋の声      茉胡

対面句会は、10月19日(日)こどもみらい館で実施。席題(「冬紅葉」「柚子」「秋高し」「芭蕉忌」「後の月」「寝酒」「行く秋」「時雨」)を含み10句選、7句選です。2名参加。

ホットワイン寝酒とならず句集読む   木下洋子
遺句集に吾子の句あまた後の月
俳諧は世界進出桃青忌         茉胡
寝酒とてあと一杯を幾度も

通信句会、対面句会とも参加希望の方は、いずれも氷室茉胡宛の次のメールアドレス、あるいは古志誌上に掲載の電話でご連絡下さい。 メルアド:mako10himu6@nifty.com 
(氷室茉胡記)                   


奈良句会(25日 夏雲システム 12名参加)

5句出句5句選
売り叩く弘法市や暮早し      まこ
ほのぼのと凩の夜の父の膝     美那子
空青く水また碧く紅葉鮒      忠雄
大銀杏黄葉も泰然自若なる     まき
軒先に庚申の猿秋しぐれ      悦子 
物忘れの話弾むや温め酒      洋子
春日社の千年楠や小鳥くる     豊
鳴き声の思はぬ近さ小鳥来る    正子
鶺鴒にだんまりとおすこの国よ   雄二
亡き人の生家の柿をもらひけり   久美
壊せるに壊せぬ祖父の冬座敷    一爽
あかあかと大和の空へ柿吊す    りえこ  

古志会員ならどなたでも参加出来ます。参加希望の方は、喜田りえこ宛で次のメールアドレス、あるいは古志誌上に掲載の電話でご連絡下さい。
メルアド:kidarieko@kcn.jp
( 喜田りえこ記)


大阪句会

メール句会
(雑詠7句出句、5句選)
名月や小舟は澪をかがやかせ     百合子
名月や戦下の人はいかに見ん     歌子
庭の枝払うて大き芋名月       久美
貫入の音鳴りつづく良夜かな     豊
亰寺町交番あたり茸売る       美栄子
百歳が百歳慰む敬老日        りえこ
満身創痍角番の相撲取        洋子
滅びゆく国を見てゐる案山子かな   陽子
校庭に白線の陣秋の晴        みつこ
花よりも木の実うれしき散歩かな   美那子
木の実降る邪馬台国はここらへん   茉胡

Zoom席題句会
席題(小鳥来る 冷やか 新酒)3句出句、3句選
棟上げのテント真白や小鳥来る    りえこ
ひややかや夕波尖る佐渡島      久美
国葬の終わりし夜の冷やかに     みつこ
円楽死して町の蕎麦屋に新酒酌む   陽子
新走り大盃になみなみと       洋子
大地の香り匂ひたつ今年酒      豊
灘五郷新酒めあての蔵めぐり     百合子
恨めしき下戸の遺伝子今年酒     歌子
(木下洋子記)


松山句会(21日 メール句会 11名)

兼題:秋冷、帰燕、秋簾、竹伐る、杜鵑草 5句出句5句選
竹伐つてそらうつくしきひるまかな  真樹子
瀬戸大橋帰燕の空の高さかな     崇
凄まじや色の変わりし秋簾      まさし
知盛の墓に日の差す杜鵑草      伊都夫 
京よりも奈良はしづかよ秋すだれ   陽市
秋簾さみしき色となりにけり     夕未子  
幾とせも窓にかかりし秋簾      和弘 
秋冷の朝参道に巡礼者        薫 
燕去る再会の日を忘るなよ      紫春
立つ風の音におどろく秋簾      まこと
過ぎし日はもとに戻らず去ぬ燕    伊都夫
秋冷にひと息つきし吾が身かな    夕未子 
終電を降りて秋冷深みけり      まさし
下町の路地といふ路地秋簾      陽市  
畳まれて実家の匂ひ秋簾       真樹子
秋冷の朝も変わらぬ病棟かな     薫 
低き日を鉈におどらせ竹を伐る    崇 
秋燕果てはひかりに飛び乗りて    真樹子
過ぎし日は過ぎたり夢の秋簾     紫春 
山里にこだま残して竹を伐る     まこと 
(木下まこと記)


福岡句会(22日 あいれ 11名)

兼題 啄木鳥
こげら打つ森や遠くに発破音     國光
ベランダの手摺の冷えも後の月    祥子
秋灯のやうな女将のゐる飲み屋    緑
啄木鳥やエイトビートで木をたたく  博人
啄木鳥や何を告げんとひたすらに   和子
吾亦紅つねに自律の一点紅      龍梅
啄木鳥やその木も伐採の予定     幸子 
雲の影動く花野の中にをり      民也
白秋の風は心の余白埋む       久子
親爺から現金書留冬あたたか     桃潤
木をつつく啄木鳥の嘴痛からん    真知子
(斉藤真知子記)


長崎句会(28日 まり庵 8名、うち2名はメール参加) 

当季雑詠 5句
足指を伸ばし山の湯星月夜      あや
草の実をつけて兵士の無念かな    なおよ
菱の実や母の郷は堀多き地      美智子
ハリケーン過ぎゆきてなほ花野かな  睦美
何時になく優しき人よ風邪心地    弘美
天高しリコーダー吹く下校の子    玲子
登る人下る人みな紅葉狩       まり子
わき見すな今刈田から熱気球     瑠衣

席題2句(雁・冷まじ) 
雁渡る車椅子より旅の夢       あや
雁渡る今や居らざるがき大将     なおよ
冷まじや外れ券舞ふ競輪場      美智子
冷まじやミサイルの空ただ青く    睦美
雁渡る近江の湖に乱れ初め      弘美
冷まじや跳ね太鼓の身のこなし    まり子
雁が音や旅籠の灯一つ消え      瑠衣
(米山瑠衣記)


熊本句会(国際交流会館 4名)

第一句座
遊郭の跡地の空虚鶸渡る       茉莉子
完璧な離婚届や土瓶蒸し       茉莉子
栗好きの母に栗剥く夢を見し     裕子
菊膾朝うつくしき鳥の声       裕子
身に入むや老樹の膚に掌を      佐介
身に入むや故人の美貌まのあたり   佐介
友つどひ座卓ととのふ菊膾      榾火
木犀の香りも売るや蚤の市      榾火

第二句座(席題 零余子飯、花野)
流竄の皇子の塚ある花野かな     佐介
空つぽのタクシー二台花野かな    茉莉子
声太き宿の女やむかご飯       榾火
(記今村榾火)

                 

 

 

 

 

    

 

 

 

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