2021年2月句会報告


第12回Youtube句会(27日 41名)

大谷主宰選
【特選】 
春節よメコン大河の天恵よ      鈴木伊豆山
梅が香に下げては戻すマスクかな   田村史生
初めての小さな角を落としけり    菅谷和子
雛あられ身ぬちの鬼も同い年     金澤道子
息吹けば笑ひ出しさうチューリップ  谷村和華子
島一つぐるりと照らし山を焼く    ももたなおよ
流氷を沖へ見送りほつき曳く     大平佳余子
【入選】
父祖の地を追はれ最果てほつき曳く  大場梅子
よきかほの五人囃子にあやからん     田村史生
劉生の画布あふれ出て春の土     長井はるみ
貧弱になりし足うら青き踏む     仲田寛子
老松の菰ほどかれて囀れる      曽根崇
春雷に指は鍵盤叩きけり       岡村美沙子
トラクターの往き来見守る野梅かな  原京子
ライオンの空気をまとひ仔猫鳴く   西川遊歩
げんげんや鋤き返されて茎白き    上俊一
引揚げの君や傘寿の春立ちぬ     池田祥子
梅一輪路地に椅子出しワンカップ   前崎都
アフガンの地より初蝶飛んでこよ   大場梅子
つくづくし日田は川べのおんた焼   篠原隆子
うぐひすの鳴いて下手くそ雨あがる  金澤道子
佐保姫やマスクの中で微笑めば    矢野京子
佐保姫も鬼も笑はす赤子かな     イーブン美奈子
家からは出してもらへぬ恋の猫    斉藤真知子
(丹野麻衣子記)


古志Zoom句会


第1回YouTube鍛錬句会(11日 12名)

大谷主宰選
第1句座
【特選】なし
【入選】
白梅や渦潮寄する島が城     丹野麻衣子
杖もまたメンテナンスに田螺和   澤田美那子
探査機の果なき孤独犬ふぐり   木下まこと
朧夜や木の香清しき休み舟    丹野麻衣子
春眠や亀の手足は何のため    神谷宣行
春潮の渦ゆるやかや望郷す    丹野麻衣子
鎌倉の山はなだらか針供養    金澤道子

第2句座(席題:鳥雲、雪の果、芽柳)
【特選】 
堰越えて遡る小魚や雪の果    篠原隆子
芽柳やおもむろに牛立ちあがる  曽根崇
【入選】
傘寿来て命尊し鳥雲に      片山ひろし
赤き実はみな鳥のもの雪の果   曽根崇
芽柳に雨のしづくや阿蘇噴火   神谷宣行

第3句座(席題:茎立、凧、いかなご)
【特選】 
ふくよかに笑ふ大仏凧      喜田りえこ
茎立ちや海をへだてて豊の国   木下まこと
火の島やいかなご舟の舫ひ傷   片山ひろし
【入選】
天竜の流れは速しいかのぼり   片山ひろし
いかなごや朝刊がまた薄くなり  澤田美那子
茎立や生きてゐるもの頬赤し   木下まこと
(丹野麻衣子記)


郵便句会

大谷弘至主宰選

特選      
寒明けのひかりまぶしく味噌仕込む   上條多恵   
尉白し毫もくづさぬ炭の形       関きみ子              
春衣母の糸持て繕はん             松岡伴子           
くろぐろと浮き世へもどる春の蠅    春日美智子          
うらぶれて盥にをるや春の蝿      北林令子    
きらきらと海苔を掬ひて舟かへる    上條多恵   
身震ひて塵きらきらと春の鹿      白石勉

入選   
しもつかれ喰うてうらうら春待ちぬ            北林令子       
蒸鰈朽木街道はるかなり        西川東久       
縫取りや色にあふれて雛箪笥      水谷比嵯代       
太陽の匂ひむんむん麦青む       春日美智子       
春一番古きサッシを軋ませて      土筆のぶ子       
菜の花や安房より伊豆へ海こえて     梅本元子        
帰る家なきふるさとや鳰の橋      水谷比嵯代   
春疾風マスクの中の口呼吸       森康子   
校門をどつと出る子ら春一番      加藤久子   
青空やあしたあさつて石鹸玉      小島楓   
噴水の噴きては崩れゐる日永      梶原一美   
観梅や肱つく芝の日の匂ひ       神永秀郎     
水温む八橋直す槌の音         北野沙羅
(斉藤真知子記)


埼玉句会(28日、埼玉会館、3名)

かぎろへる国家公務員倫理法   琅太
リモートでつながる絆水温む
春来るロッキーのテーマにのつて
雪解川束ね束ねて大黄河     靖彦
かの人の三日天下や山笑ふ          
のどかさの「あれ」「これ」ですむ夫婦かな  
うれしさは男の料理水温む    ゆき
水槽にメダガふえゆく長閑さよ
この国の行方あやしき田螺和


東京Web吟行句会(20-22日、夏雲システム、27名)

吟行地:明治神宮界隈
兼題:水温む、牧開、初蝶
10句出/8句選

しんしんと水湧き出づる木の芽かな 葛西美津子
水温む名前きまりし貰ひ猫    神戸秀子
駈け出して駿馬となれよ牧開   わたなべかよ
初蝶のひかり生みつつ零しつつ  金澤道子
初蝶や眠れる蕾起こしゆく    菅谷和子
島ひとつ牛に捧げて牧開     関根千方
たたなづく浅間のけむり牧開   片山ひろし
苗木市うまき実のなる一本を   石塚純子
草の香の乳をしぼるや牧開    神谷宣行
神主の幣千切れ飛ぶ牧開き    園田靖彦
雨上がる雫のごとく初蝶来    長野いづみ
初蝶を待ちゐてけふも日暮れけり 那珂侑子
江戸に水運びし水路ふきの薹   吉田順子
牧開くたちまち春の駒となり   大平佳余子
水温む丹頂の脛ぬらしつつ    服部尚子
月浴びて月のいろなる蕗の薹   長井亜紀
初蝶の風に乗るかに休むかに   石川桃瑪
近くても帰れぬ故郷水温む    大場梅子
初蝶や見上げて通る大鳥居    仲田寛子
花の昼餡練りゆけば輝やけり   松岡伴子
突上げて音あたたかや紙風船   持田明子
下萌や故国民主化願ふデモ    原京子
きりも無き夫との会話水温む   三田菊江
牧開山にこだます牛の鈴     越智淳子
牧開き子供の国の赤い汽車    岩﨑ひとみ
牧開きべこ放ちやる岩手山    鈴木伊豆山
(関根千方記)


岐阜句会(25日 岐阜市西部福祉会館  6名)

第1句座 兼題(山笑ふ 雛祭り 猫の恋)
雪青く光れる伊吹山笑ふ       通江
呼ばれても知らん顔なり春の猫    之子
恋の猫目にもとまらず駆けぬける   沙羅
故郷の山河うつろや山笑ふ      春日美智子
金華山日差し明るく山笑ふ      上松美智子
山笑ふ龍の目覚める山の池      恵美子

第2句座 当季雑詠
春疾風波の乱れし光かな       通江
竜眠る沼にほつほつ牡丹雪      之子
舟着きてすぐ釜茹での白子かな    沙羅
聞きなしのお菊二十四と春の雪    春日美智子
春の渡し釣竿持ちて男来る      上松美智子
かぎろひてきらきら回る観覧車    恵美子
(梅田恵美子記)


京都句会

 夏雲システムを利用して実施。事前に送った京都北野天満宮梅花祭の写真数枚からの連想句を含め、8句投句、選は特選1句、入選7句で行いました。

七色の糸を通して針供養      美那子
しばらくは音と遊ばん種袋      雄二
梅見して上七軒へくり出さん     忠雄
わきまへぬ女上等蝌蚪の紐      りえこ
撫で牛の黒艶やかに梅花祭      (木下)洋子
夫婦して等しく老いぬ梅真白     まき
春の戸を一寸あけたり梅一輪     初男
車椅子降りて青きを踏んでみん    英二
川底の石輝やかせ春の川       (藤井)洋子
春立つや太閤の餅搗き上がる     久美
家苞の長五郎餅や春火鉢       幸子
庭師来て燻らす煙草浅き春      重明
教材のどさりと届く老いの春     茉胡
(氷室茉胡記)                    


奈良句会(9日 ズーム句会 10名)

菜の花や鴉太郎は次郎呼び      りえこ
たんぽぽや犬のリードをゆるめつつ  豊
春兆す味噌の香残る杉の樽      悦子
かつて処刑場春寒の賀茂河原     茉胡
なにもいらぬ炊きたて飯と花菜漬   正子
春眠の余生の夢はおもちや箱     まき
帯に梅一輪咲かせ初天神       久美
比叡近くやはらかく焼く初諸子    美那子
湖の凪に出会ひて初諸子       雄二
水ぬるむ二月堂へ無言の僧      忠雄
(上田忠雄記)


大阪句会(メール句会)

金閣の金を沈めて寒の水       茉胡
餌配る人も牛らも息白く       洋子
帰るまで待つてはくれぬ雪だるま   歌子
小鳥の巣ひとつ抱きて枯木立つ    豊
夕寒し遊び惚けの児が消えて     重明
仏かも知らざる鬼に豆を打つ     百合子
靴中の迷子の小石春隣        りえこ
家々も樹々も楽し気日向ぼこ     泰子 
日向ぼこただならぬ世に存へて    まき
ツナ缶のレシピは無限春隣      みつこ
椅子ひとつ置けば春待つ部屋となり  久美
沸き上がる鍋やクレソン大掴み    陽子
落第の子にやはらかき卵焼      美那子

席題(耕・山笑ふ・百千鳥)3句出句3句選
耕さん心の底の土かたし       歌子
コロナ禍もおのれ耕す糧とせん    りえこ
ひたすらに耕すだけよコロナの世   百合子
やうやくに馴れしマスクや山笑ふ   豊
ひゆんひゆんと縄跳びの子や山笑ふ  みつこ
見交はせて紀伊の山々笑ふかな    陽子
二上山に祀れる皇子や百千鳥     美那子
全山に響き渡るや百千鳥       洋子
山笑ふ古り古りし塔二つ抱き     久美
(木下洋子記)


松山句会(20日 メール句会 9名)

兼題:魚氷に上る、余寒、観梅、クロッカス、菠薐草、飯蛸
5句出句 5句選

菠薐草手に余る程採りしかな     夕未子
逆立ちの飯蛸たちの載る小鉢     和弘
上目して恋あからさまクロッカス   陽市
よふやくに猫の泣き出す余寒かな   紫春
すぐそこに幸せはありクロッカス   崇
風光る湖に漣走りつつ        一美
梅見茶屋赤の襷のくるくると     まさし
飯蛸や波の記憶を忘るまひ      紫春
鐘ついて余寒の空を震はすか     陽市
春立つや気概上々廚ごと       夕未子
知盛は沈み飯蛸は釣られけり     まこと
魚氷に上り高校生駆けゆく      和弘
肱川の靄の底より白魚舟       崇
観梅や天神山を上り下り       博
山飯蛸の頭つつきし伊豆の膳     薫
仏壇に余寒や座敷童来よ       まさし
ほうれん草丈夫になれと親願う    博山
観梅やおだやかな妻見つけたり    薫
梅の香に染まりゆくまで梅見かな   まこと
(木下まこと記)


福岡句会(19日 通信句会 11名)

5句出句5句選
水仙を括りし藁も匂ひけり      真知子
二ン月の風あらあらと巨船来る    和子
立春や長谷川櫂を揺すぶらん     桃潤
かぎろひて水の襞ともひかりとも   祥子
海神も守るものなし春の海      博人
春日や寂しい象は鼻上げて      充子
目刺し焼く空に小窓のやうな青    久子
旧正の西安に食ぶシシカバブ     修
春一番風の便りといふは儚き     國光
春草や青々見えて遠くあり      龍梅
縦書きの国に紅梅しだれけり     緑
(吉冨緑記)


長崎句会(25日 メール句会 9名)

当季雑詠 5句
一斉に辛夷の蕾天を衝く       あや
マスクして護られてゐる安堵感    綾子
春眠や体内時計の遅れをり      順子
まる)(さんかく)(しかく)書の文来る立春      なおよ
園児らの機関車トーマス猫柳     弘美
早春や新人戦のキックオフ      まり子
汚れなき時は短し春の雪       睦美
明日までと今日も唱へて春炬燵    玲子
立春大吉友の句遂に巻頭ぞ      瑠衣

題詠2句(春の雨・山焼く)
山焼きやカリフォルニアでは山焼かれ あや
春の雨折りたたみ傘の気楽さよ    綾子
山焼きて緑の息吹き牛の原      順子
福江島ぐるりと照らし山を焼く    なおよ
山焼きや反セクハラの風吹ける    弘美
山焼きの煙ぽつぽつ峡の村      まり子
山焼きや火の神とうと駆け抜ける   睦美
春の雨小さき波紋ワルツかな     玲子
山焼ひて早や草ぐさの緑かな     瑠衣
(米山瑠衣記)


熊本句会(通信句会 4名)

判決の二行の主文冴返る       戌彦
冴返る風の子たちの半ズボン     戌彦
ワクチンを打つか打たぬか亀鳴けり  裕子
冴返る夜の琴糸響くなり       裕子
四つ折りの給与明細木の芽和え    茉莉子
大好きな茶碗の割れて冴返る     茉莉子
この国の緩びし箍を亀の鳴く     榾火
春告草わけても紅や道子の忌     榾火
(今村榾火記)

                 

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