2021年3月句会報告

第13回Youtube句会(3月27日、44名)

大谷主宰選
【特選】
母の糞となりに小さき仔馬の糞   大場梅子
和紙といふ霞にしまふ雛かな    神谷宣行
田楽や美濃は天下の臍にして    臼杵政治
抱へゆく竹筒ぬくき甘茶かな     神戸秀子
ヒマラヤの恵みの蜂の蜜採らん    大平佳余子
解けきらぬ雪にトナカイ角落とす   丹野麻衣子
船着き場舟がくるまで鶏合はせ    菅谷和子
男去る雲雀のねぐら鋤き残し     園田靖彦
【入選】
自粛せんやどかりのごと慎ましく   前崎都
げんげ田の行く雲と吾と蜜蜂と   長野いづみ
きゆうきゆうとときめきも巻き花衣   谷村和華子
子の足の父より大き潮干狩     米山瑠衣
法然の寺よ南無なむ初桜      大平佳余子
高く高く雲雀は恋の空めざす    間宮伸子
帰りなん古屋の草を葺き替へん  上俊一
遠足や江ノ島の橋渡りくる      片山ひろし
東京もいつか遺跡よ春灯し     神谷宣行
競漕や一直線の一騎打ち      西川遊歩
こんなにも軽いしあはせ紙風船  上村幸三
田楽の味噌の黒さも三河ぶり    菅谷和子
伸びきつて午後は眠たきチューリップ 大場梅子
耳掻きも嘘も下手くそ春炬燵    田村史生
この星に地雷一億鳥交る      稲垣雄二
とまれ蝶兵士かまへる銃口へ    喜田りえこ
糸柳掛小屋かけん何売らん    斉藤嘉子
(丹野麻衣子 記)


古志Zoom句会


郵便句会

大谷弘至主宰選
 
特選   
三尺の苗木雄々しき松の芯      関きみ子        
採血も済んで弁当初ざくら      水谷比嵯代   
また一人花に加はる立ち話      梶原一美        
対岸に届きさうなる朝桜       田中尚子          
春の猫あとはひねもすのたりかな   西川東久     
挨拶もつらつら椿垣根越し      梶原夕未子        
玉堂の馬をつれ出す柳かな      小島楓          
雛の家かつて藩主の厩舎らし     北野沙羅       

入選   
山越えし伊勢の檜やお松明      白石勉       
生家出で婚家への道白木蓮      小島楓        
春疾風辛夷の蕾もみくちやに     上條多恵   
荒れ藪のとつぱづれなりうぐひす来  春日美智子    
木曽川の土手をつかみて土筆摘む   小島楓     
葉の色にまがひて青き春蘭よ     森康子    
春風や丈高き父と汽車に乗る     上條多恵   
亀鳴くや一里の畦を濡れて来し    松岡伴子     
賑やかや鳩追ひ払ふ雀の子      神谷和子    
まだ風の電話はあるか震災忌     伊達公子     
為すやうに成らぬ世の中雪崩くる   北林令子    
ゆつくりと落ちずに萎む椿かな    森康子     
大根の花を見たくて残し置く     梶原夕未子   
目こぼれの土筆なれども煮て喰はん  小島楓     
城山もその連山も夕霞        梶原一美      
桃紅の桃はくれなゐ墨は玄      北林令子     
あはあはと雀隠れの藪ひかる     松岡伴子      
長き日の我が影踏みつ丘下る     梶原一美     
大音響子猫の鼓動手に受けて     西川東久        
(斉藤真知子記)


埼玉句会(28日、埼玉会館、4名)

凡人の凡にすぎゆく日永かな   琅太
コロナ禍を忘れさせたる桜かな
生涯の岐路とも知らで大朝寝   靖彦
藁しべの契り解かれし目刺かな          
人の世は出会ひと別れ桜咲く   つねお
たけなはに小用に立つ四月馬鹿
宰相の首すげかへて四月馬鹿   ゆき
恋のなき今が幸せ目刺焼く
(萬燈ゆき記)


東京Web吟行句会(20-22日、27名、夏雲システム)

吟行地:六義園
兼題:種浸し、涅槃会、雲雀
10句投句/8句選句

天井に百花あふるる涅槃かな   神戸秀子
寝ころびてひとり雲雀の空の下  葛西美津子
涅槃図の釈迦の若さに見入りけり 石塚純子
風吹いておほよろこびの雪柳   金澤道子
大桜しぶきをあげて枝垂れけり  神谷宣行
春の雪あの日の海へふりつづく  長井亜紀
春障子それぞれに子ら巣立ちけり 吉田順子
白木蓮散るや小さな舟となり   仲田寛子
魂きはる命宿せと種浸す     園田靖彦
蓬莱の島をぐるりと蝌蚪の紐   大場梅子
啓蟄や押すな押すなの土の中   服部尚子
揚雲雀空の蒼さに吸われゆく   持田明子
春風や折り目のすれし江戸古地図 菅谷和子
箱寿司の海老や玉子や木の芽雨  わたなべかよ
鶴引くや空に花道あるごとく   石川桃瑪
存分に命吸い上ぐ種浸し     松岡伴子
あをあをと雨になりたる涅槃かな 上村幸三
石ころを蹴り蹴り行く子揚雲雀  長野いづみ
涅槃図や象のまなこに覚悟あり  関根千方
お涅槃のやうなお顔で逝かれしと 那珂侑子
廃炉論争じつと聞きゐる寝釈迦かな 原京子
種浸しひとつ呪文を掛けながら  岩﨑ひとみ
さくら見て抹茶いただく六義園  片山ひろし
涅槃絵や涙のなんと大きこと   越智淳子
涅槃会や木魚の僧のこつくりと  大平佳余子
アルバムの卒業写真葱坊主    鈴木伊豆山
雛かざる早世の母偲びつつ    三田菊江
(関根千方記)


鎌倉吟行句会(4日、宝戒寺、東勝寺跡)

第一句座:吟行句・雑詠句で10句出句5句選
梅の寺椿の寺とさへづれる    美津子
鳥雲に電気自動車充電中     道子
春愁の舌にころがす浅田飴    琅太
水温む鯉金色の腹見せて     侑子
五百円十一で借りる春の暮    振昌

第二句座:席題「すかんぽ」「北窓開く」で3句出句3句選
津軽富士見ゆる北窓開けにけり  琅太
すかんぽや故郷に似し旅の空   美津子
すかんぽや汐たらたらと淀の川  振昌
北窓を開ければ隣も開けにけり  侑子
すかんぽや土手に放ちて子と犬と 道子
一筆啓上北窓を開きけり     はるみ
(長井はるみ記)


岐阜句会(25日 岐阜市西部福祉会館 6名)

第1句座 兼題(桜 蛇穴を出づ 貝寄せ)
ウインドサーフィン貝寄風を楽しめり 之子
貝寄風や乙女の釣りしブラックバス  沙羅
貝寄風のうすきバラ色吹きにけり   通江
貝寄風や新しき幸誘へよ       上松美智子
約束の友よ待ちゐる桜かな      春日美智子
拾ひきし桜の枝やほころびぬ     恵美子

第2句座 当季雑詠
囀りの真中にありて安らげり     之子
夜は笛吹いてはならず桜花      通江
千トンの水湧く街や花曇       沙羅
追いかける桜前線花淡し       上松美智子
芽ぶかんと産土の木やつやつやと   春日美智子
水底に魚影の光春の峡        恵美子
(梅田恵美子記)                        


京都句会

 夏雲システムを利用して実施。事前に送ったいかなご漁の写真数枚からの連想句を含め,8句投句,選は特選1句,入選7句で行いました。

水温む永遠に温まぬ廃炉水      雄二
途絶えしは姉のくぎ煮の定期便    美恵子
年年にちがふ月上げお水取      久美
啓蟄やごとりと音す製氷器      りえこ
いかなごの釘煮香るやそこらぢゆう  初男
いかなごの秤こぼるる魚ン棚     まき
逃げ水や同胞(はらから)親の年を越ゆ 英二
路地裏に釘煮の甘き匂ひかな     幸子
あさぼらけ初漁囃す百千鳥      忠雄
いかなごや海の光を眼の内に     (藤井)洋子
ぴくぴくと動くや旨き鯛の皮     一爽
春暁やトロ箱に投ぐ糶値札      茉胡
(氷室茉胡記)                    


奈良句会(16日 ズーム句会 11名)

長靴の汚れもうれし春の土      正子
吹いてやる乳欲しき子へ風車     久美
木蓮は光分け合ひ花盛り       茉胡
角落したる老鹿の横座り       美那子
葺替は瓦八枚地蔵堂         雄二
まどろみを破る添水や春の雲     りえこ
一吹きの天女の吐息春の雲       まき
屋根替へて村に光のあふれけり     洋子
屋根替へて白山白くありにけり     豊
教室の窓辺から見る春の雲       悦子
蛇笏ゆき龍太もゆくや春の雲     忠雄
(上田忠雄記)


大阪句会(メール句会)

(雑詠7句出句5句選)
梅東風やパン屋の多き京の街     茉胡
春寒や間歩に籠れる声を聴く     洋子
踏切の音を遠くに春の朝       泰子
運ばれきし竹太々とお水取      豊
笹子鳴く籠り居飽きた一抜けた    美栄子
むずと鼻確かな春の来たりけり    陽子
狛犬もくさめせんとや杉花粉     まき
さざめけるロビーにしんと雛かな   みつこ
雛飾る男の子ばかりを育てあげ    美那子
春の田や神のまぐはいすこやかに   りえこ
いづこより種はこぼれて母子草    百合子
抽斗の雲形定規鳥帰る        歌子
菜の花やゆらゆら淀を下りゆく    久美

席題句会報告(席題 春ショール、春闘、たんぽぽ 3句出句3句選)
春ショール別れの言葉唐突に     久美
春ショール巻きてほどきてまた羽織り みつこ
新しき春のショールをクラス会    泰子
春闘や昭和の夕日射す工場      陽子
春闘の騒の中なる出合ひかな     百合子
春闘や駅長が売る定期券       洋子
金網のほころび二つ鼓草       豊
たんぽぽや誰かと話したき午後の   美那子
たんぽぽや天の金貨を撒きしごと   歌子
(木下洋子記)


松山句会(21日 メール句会 11名)

兼題:ぶらんこ、椿、初蝶、アザラシ、伊予柑、雛あられ
5句出句 5句選
伊予柑の香あふれる軍手かな     崇
ぶらんこや人待ち顔の高校生     和弘
につぽんはせかいのいなか椿咲く   陽市
雛あられほのと添へありホーム食   一美
初蝶やことのはは山河にあふる    紫春
縄文の夢の中でも椿落つ       伊都夫
初蝶のピアノに合わせ舞ひにけり   薫
初蝶を追ひて追はれてをさなかな   まさし
ふらここの遥かな時を越え来たり   夕未子
初蝶にまだ寒き風光堂        まこと
初蝶や離ればなれになる二人     崇
アザラシや利尻の浜に買ふ昆布    一美
春障子雨のけはひを消してをり    夕未子
出世からもつとも遠いぶらんこよ   陽市
日脚伸ぶ海豹の爪切り揃へ      伊都夫
伊予柑を山積みにする八百屋かな   和弘
アザラシの母の泪や波蒼く      紫春
伊予柑や子規のふるさと思い馳せ   薫
くれなゐの息吐きにけり落椿     まこと
(木下まこと記)


福岡句会(27日 通信句会)

一枚の葉つぱとなりて春の風     龍梅   
春潮の置き忘れたる海星かな     充子   
約束のなくてひとりの春炬燵     和子    
春干潟伸びて地球の廻りけり     國光 
春風や平家一門松の中        緑  
有り余る夜となりけり合格子     幸子
葱坊主のために育てしやうな畑    祥子   
惜別を卒業と言ふ時代かな      博人 
啓蟄の畦にさざめく命かな      久子 
人知れず大山桜散るところ      桃潤
雛をさめ女雛男雛はちがふ箱     真知子   
(斉藤真知子記)


熊本句会(通信句会 4名)

糸に通す春の光とビーズ玉      裕子
しぶき上げ沖へゆく船木の芽吹く   裕子
ラーメンを運ぶバイクや春疾風    茉莉子
鳥といふ鳥の現はる雪解かな     茉莉子
蕨餅幼馴染の眩しかり        戌彦
静脈の膚に透けて雪解かな      戌彦
わらび餅白地のれんに月と梅     榾火
祖母山の脛をけづりて雪解川     榾火
(今村榾火記)

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