暦の上ではきょうは五節供のひとつ、雛祭りである。「寧楽」は奈良の異称。やすらかに楽しむの意味を持つ。大和の風土で育まれたこの寧楽雛は,清潔な香りの桧を材料に、平安時代(870年頃)より伝わる簡潔な一刀彫の造形性、古都の伝統色を品よくまとった色遣いと、まさに春の招来にふさわしい玩物。それゆえ古えを偲ぶ深い作者の心持ちが見えてくる句であろう。シンプルな作りゆえ出し入れも楽な雛人形であるが、気をつけるべき点があるとしたら、塗ってある金箔や胡粉を直に指でこすらぬことくらいであろう。仏教でいう七色とは、青・黄・赤・白・赤(淡紅)それに、金と墨色とが挙げられよう。おそらくは「七難即滅、七福即生」を願っての七色なのであろう。(坂内文應)