ZOOM句会
深川句会(11日/17名)
大谷主宰 選
【特選】
書込みもおほよそ忘れ古暦 上 俊一
厚岸の海ごと啜る牡蠣の宿 長野いづみ
インバネス旅の牧水二日酔ひ 西川遊歩
冬深む喰ふも読書もひとつ灯に 小林晶子
初電車月日ことんと走り出す 小林晶子
柚子の香の母の背中を流しをり 菅谷和子
地に沁みて清瀬の霜の白さかな 篠原隆子
寂しみて神は鯨をこの星に 谷村和華子
ごめんねと子を抱きしめし蒲団かな 城田容子
「へ」音より霽るる「は」音で大嚏 仲田寛子
山に靄湖に一艘翁の忌 越智淳子
【入選】
ひざ毛布するりと落ちて夢のそと 小林晶子
恙なく子の還暦を祝ふ秋 小林晶子
サンタクロースのことに気づいてゐるらしく 臼杵政治
五十年顔見ぬ友よ賀状書く 臼杵政治
口下手を恥ぢてはをらず根深汁 臼杵政治
夫人から知らせ賀状を書く頃に 臼杵政治
サッチモや冬暖かき喫茶店 城田容子
落し穴老後にありや絵双六 仲田寛子
一周忌終へて朝餉の蕪漬 神谷宜行
逝きし母恋ひて一年古日記 神谷宜行
雪吊に勤しむ鰊御殿かな 長野いづみ
行く年の臼を洗へる父の手よ 長野いづみ
しんしんと冷気漉き込む美濃紙かな 西川遊歩
年上の猫が湯たんぽだつた頃 西川遊歩
悠々と日のかけら吐く鯉の冬 谷村和華子
炉話はまたあの話梁の煤 上 俊一
実南天むかし厠のありし庭 上 俊一
指示待ちの夫をおだてて煤払ひ 大場梅子
下足札とつて師走を蹴つとばし 篠原隆子
菱紅葉余呉に悲恋のかたりぐさ 篠原隆子
いつの間に老斑の甲蜜柑むく 園田靖彦
第二句座 席題 ( 飾売 悴む 焼藷 )
【特選】
塩吹いて能登のほだはら飾売 篠原隆子
飾売倅らしきが小屋の裏 石川桃瑪
弁当は焼藷一つ疎開の子 城田容子
あをあをと自慢の藁や飾売 城田容子
扇面に大海老跳ねて飾売 神谷宜行
悴んでゆく国あまたこの国も 仲田寛子
飾売終へてひとまづコップ酒 小林晶子
【入選】
悴めば暖めくれし君は亡く 長野いづみ
心まで悴むなかれ若者よ 大場梅子
べらんめえ早口せつかち飾り売り 西川遊歩
また冬を生き存へて焼藷よ 上 俊一
悴みてろれつ怪しき老い口 越智淳子
(篠原隆子記)
東京ウェブ吟行句会 (15-18日 夏雲システム 24名)
吟行地:秩父夜祭(秩父神社)
兼題:松迎、初寝覚、双六
かんじきの跡ふかぶかと松迎 菅谷和子
姿よき松を迎へてはればれと 大場梅子
青空へ手斧一閃松迎 稲垣雄二
武甲山荒星万と従へて 大平佳余子
秩父夜祭髪に火の香の女来る 神戸秀子
夜祭を終へて秩父の山眠る 長野いづみ
夜祭ぞ秩父の名酒熱うせよ 藤英樹
健やかな妻の寝息よ初寝覚 臼杵政治
錆びつきし鉈の重みや松迎 安藤文
待ちに待つ明日は夜祭大根引く 園田靖彦
風のなきひと日賜り松迎 金澤道子
山々の波打つ夜や秩父祭 関根千方
双六を囲む家族といふまぼろし 石塚純子
あをあをと瑞穂の国の松迎 神谷宣行
山の神へ高き柏手松迎 越智淳子
負け役の母呼びに行く絵双六 片山ひろし
兜太恋し秩父囃子がどこどこと 岡村美沙子
スーパーの売り場にて我が松迎 石川桃瑪
両側に吾子笑まへをり初寝覚 谷村和華子
海原の鯨の背なに初寝覚 上村幸三
双六や孫にサイコロ振つてもらふ 那珂侑子
ふつふつと花となりゆく卵酒 松岡伴子
賽銭箱なんども入れる七五三 服部尚子
四畳半双六広げ背を丸め 原京子
(関根千方記)
鎌倉吟行句会 (1日 覚園寺 9名)
第一句座 (7句出5句選)
枯葉より枯びてゐたる仏かな 英樹
遠火事や夜はおそろしくうつくしく 美津子
水底の落葉うつくし古都の堀 健
やはらかく人混み抜ける冬日和 淳子
雲ひとつ置かぬ青空十二月 道子
山道は心細しよ冬すみれ 益美
冬青空遠くに小さき一機かな 恵美子
パンジーの植ゑ替へすめば正月来 侑子
メタセコイア冬空ぐいと持ち上ぐる 和華子
第二句座 (狐 / 春着 /青 3句出3句選)
春着きて狐の嫁入かけ込みぬ 侑子
ふさふさの一塊駆ける寒狐 淳子
ふさふさの尾こそ命よ北きつね 道子
なつかしき春着の色や母の色 恵美子
春着きて本家分家と今もなほ 益美
三日月のあをく狐の来てゐたり 美津子
マフラーのキツネ外して抱擁す 健
誰にでも笑顔ふりまく春着の子 英樹
白鳥や泣きたきくらい青き空 和華子
(谷村和華子記)
埼玉句会(22日 埼玉会館 5名)
凡人の凡にすぎゆく師走かな 市人
貧乏の棒につまづく師走かな
盟友の契りたがはず去年今年 靖彦
君逝きて鎮魂の日々去年今年
悪筆は人生の味賀状書く 宣行
冬深し夜空を風が切り刻む
しばらくは思考停止や日向ぼこ つねお
戦争がいまもどこかで師走空
初夢や夢なき時代生きをれど ゆき
初夢の夢を探してゐるところ
(萬燈ゆき記)
愛知吟行句会(6日 愛知県祖父江町)
名古屋鉄道一宮駅から、尾西線に乗り山崎駅で下車。祖父江町山崎地区は、銀杏の一大生産地で、イチョウの木が11,000本あるといわれている。駅はイチョウの黄色の中にあった。駅近くのイチョウが取り巻く公園の黄葉を踏みながら吟行。銀杏を買って、一宮駅に戻り、カレーを食べ、句会。
恐竜も闊歩していた銀杏の実 春日美智子
ストリートピアノが響く十二月 肇
息白く線路をまたぐ漢かな 楓
黄金のいちやう黄葉は日のかけら 通江
銀杏踏み香を電車に持ち込みぬ 雄二
(稲垣雄二記)
岐阜句会(19日 岐阜市西部福祉会館)
第1句座 兼題 冬桜、年用意、12月
街中のこんなところに冬桜 沙羅
冬桜久女住みし地華やぎぬ 上松美智子
恋語るカップル素通り冬桜 春日美智子
野球ボール冬田にひとつ忘れあり 恵美子
第2句座 当季雑詠
冬うららとは参らず鼻水ポタリかな 沙羅
極月や政変多き年の過ぐ 上松美智子
落葉焚き歌ひて子らは休み待つ 春日美智子
年用意日差しをあびて庭手入れ 恵美子
(梅田恵美子記)
京都句会
古志京都句会12月は、いつもどおりの通信句会と、主宰指導の吟行(知恩院、円山公園、八坂神社)句会を実施しました。
吟行句会は、12月7日(土)知恩院内の和順会館で実施。21名出席。第1句座吟行句を含む当季雑詠5句出句5句選、第2句座席題(「冬至」「冬晴」「年惜しむ」)3句出句3句選。結果は次のとおりです。
主宰選(○特選、括弧内は原句)
第1句座
○東山眠らせ今日の針仕事 楓
○押しピンの穴また増えて古暦 欣也
(押しピンの穴また増えし古暦)
○着ぶくれて下品の下さへたふとけれ 久美
○御影堂日あたりながら時雨れけり 久美
○水鼻や芋ばう食うて句の力 りえこ
(水鼻や芋ぼう食うて句の力)
○納め句座名前親しき初対面 奈央子
○年の市大き乾鱈かつぎ行く 洋子
○これがまあ大年のあの大釣鐘 恵美子
○なつかしき顔を並べてかぶら蒸し 麻衣子
湯葉揚げにだんだん慣れて京の冬 洋子
お救ひの杓子をこぼれ寒雀 久美
(お救ひの杓子こぼるや寒雀)
幾僧の読経の声や障子突く 淳子
底冷えや二人ゐることなほ嬉し 陽子
花びら餅老いても汚れてはならず 恵美子
雀焼きしぐれてきたる東山 麻衣子
三門は晴々として納め句座 美那子
襖絵を抜け出てふくら雀かな 美恵子
(襖絵を抜け今ふくら雀かな)
大伽藍いくつ抱きて山眠る 美那子
顔見世の京に句友と顔合せ 初男
わが影もうれしく歩く冬の川 麻衣子
栗桶に丹波の栗をあふれしむ 麻衣子
柿干して大根干していざ句会 楓
白川に使はぬ橋や都鳥 いほり
酒一合飲んで紅葉につまづける 麻衣子
第2句座
○足早に人を抜かして年惜しむ 麻衣子
○冬晴や鳶が輪をかき凹む空 和華子
○麻酔から覚めてこの世の年惜しむ 久美
○冬晴に干せし足袋もてうどん踏む 麻衣子
(冬晴に干した足袋もてうどん踏む)
○冬晴れや餅につくべくよもぎ摘む 美恵子
(冬晴れや餅つき用のよもぎ摘む)
○年惜しみけふの出会ひを惜しむかな 美那子
(年惜しみ出会ひを惜しむ我等かな)
若冲の鸚鵡飛び立つ冬の晴 りえこ
冬晴やお菓子の缶が薬入れ いほり
冬晴やよいしよよいしよと京の坂 楓
後はもう附録の日々ぞ冬至の日 茉胡
船員の町に繰り出し年惜しむ 欣也
よわよわと東山より冬至の陽 りえこ
主宰御句
第1句座
ゆく年の水に泳がせ諸子売る
年用意ぶつ切りの鯉甘く煮て
ことしまた錦のここに飾売
洛中や誰が掘りしか泥鰌売る
ゆく年の有次で研ぐものの数
冬晴れの比叡を見据ゑ勢至丸
除夜にまた鐘つきに来ん知恩院
第2句座
一陽来復いつものやつをもう一杯
おが屑を跳ね出す海老や年惜しむ
年惜しむ年に惜しまれゐるごとく
通信句会は夏雲システム利用。主宰のブログ(冬田・浮寝鳥)、りえこさんのふるさと歳時記(古志12月号)、米花さんの絵手紙(クリスマス)からの連想句4句以上を含む8句投句8句選句(うち1句特選)。16名参加。結果は次のとおりです。
雪催ひ能登の棚田の崩れ畔 忠雄
長椅子にもう一人詰めおでん酒 雄二
伊吹山遥かに眺め冬田打つ 悦子
白息に文字を入れたし『好きやねん』 佳澄
京なれや白洲正子と鴨南蛮 りえこ
商ひの金庫は笊や年の市 みさ子
夕暮に影溶けてゆく浮寝かな 美那子
病室に明る過ぎるよポインセチア 和華子
鹿ぢつとせよ運慶が彫つてゐる 米花
何もかもわすれて眠る浮寝鳥 初男
季語探す焼き芋包む新聞紙 美恵子
悩みごと忘れてしまひ大紅葉 恵美子
冬田道あけ放たれて俳句寺 杳平
暮れてゆく富士をはるかに冬田かな 久美
露座仏の総身小春日和かな 英二
身籠もりし嫁には二つ寒卵 茉胡
来年度も毎月、通信句会(12日投句締切、17日選句締切)、対面句会(第3水曜日こどもみらい館)の二本立てで行う予定です。参加希望の方は、いずれも氷室茉胡宛の次のメールアドレス、あるいは古志誌上に掲載の電話でご連絡下さい。メルアド:mako10himu6@nifty.com
(氷室茉胡記)
まほろば奈良句会(24日 夏雲システム 10名)
先づ記す出産予定初暦 まこ
初暦開けば吾を見つめをり 忠雄
大小のひびもゆかしき鏡餅 洋子
年末の予定書き込み初暦 悦子
天地の重みと思ふ鏡餅 りえこ
寒林やもの無きことの清々し 淳子
晦日蕎麦打ちに集ふや大家族 まち
熱燗やしばし遠のく浮世事 正子
酌み交はす神主ふたり年忘れ 久美
あばよの顔見せず手を振る冬帽子 雄二
(きだりえこ記)
大阪句会
メール句会(雑詠7句出句、5句選)
道折れてまた新しき紅葉色 泰子
太陽は力出しきり暮れはやし 歌子
秋惜しむ色とりどりに京の菓子 久美
渡り鳥かがやく冬を連れてきし 洋子
時雨るるややがて静かに白きもの 百合子
凩や夜叉にも雌雄ありしとか 茉胡
木枯しに押されてくぐるのれんかな 頼温
ただならぬ姥の力や茎の石 陽子
上々や小春に仕上ぐ畝ひとつ りえこ
句心を燃やす暖炉の火が赤い 伸一
君知るや湯たんぽにある進化形 美那子
焼き芋や地球の裏に戦火あり 美栄子
返信のあれこれ迷ひ湯冷めかな みつこ
極寒に赤子ごくごく乳を吸ふ 誠
席題Zoom句会報告 席題(焚火 初空 手)3句出句、3句選
集ひ来よ富士の裾野の大焚火 りえこ
炎見つめみんな無口の焚火かな 歌子
わだかまり焚火に燃えて揺らめきて 誠
焚火たく山静まりて闇ふかし 頼温
たのしみは焚火の底の藷五つ 洋子
汚しつつ軍手のなじむ焚火かな みつこ
初空や月はあらたに生まれんと 百合子
趣味ありて光ある句を初御空 伸一
母の手の温みの中へ日向ぼこ 陽子
初空へなに掴まんと赤子の手 美那子
刺し子の手止めて熊撃つ話など 久美
冬にても手の荒れ少なしよき時代 泰子
(木下洋子記)
松山句会(22日 メール句会 10名)
兼題:年の市、鮟鱇、初便り、松の内、梅 5句出句5句選
年の市道の真中を帰りけり 陽市
嫁ぐとの添え書きもある初便り 喜久子
大叔母の筆すこやかに初便り 真樹子
はじめての一人さみしい松の内 薫
初たよりもらふばかりとなりにけり 紫春
見るものは人の背ばかり年の市 夕未子
そこかしこ飛び交ふ威勢年の市 まさし
Uターン知らせる友の初便り 真奈美
年の市あれや平和の福袋 博山
一輪が一輪さそひ梅ひらく まこと
鮟鱇の皮を引きつつさばきけり 陽市
梅開くきのふの白とけふの白 喜久子
鮟鱇の心は知らず吊るしけり 真樹子
松の内大気清らか空の青 博山
梅の香や平安の世にいざなはれ 紫春
行き行きて一目千本梅の里 まさし
彼の人に初便りするポストまで 夕未子
はや何か燃やす棚田や松の内 まこと
(木下まこと記)
福岡句会(21日 福岡市南市民センター 10名)
第一句座
座布団に躓くけふや開戦日 悠
懐手解きてむんずと旅鞄 民也
御仏の膝に一輪落椿 和子
一皿の潤目鰯にコップ酒 博人
猟銃音跡形もなき鴨の陣 修
毒をもて毒を制する神農祭 龍梅
付き添いの交代に行く霜の朝 幸子
空席もなく杭の上浮寝鳥 紀美代
人の世に尽くす人ゐて木守柿 久子
あとひと日待てず干柿食みにけり 真知子
第二句座(席題 クリスマス、冬至)
重くとも冬至南瓜を買ふ覚悟 久子
遅れじと句会へ急ぐ冬至かな 修
鬼柚子の風呂をこはがる子どもかな 民也
クリスマス老人はただ街に出る 悠
温泉は柚子の香まみれ冬至かな 博人
新聞を開きて知るや冬至の日 龍梅
満載の貨物列車やクリスマス 幸子
胎の子も柚子蹴ってゐる冬至かな 真知子
(斉藤真知子記)
長崎句会(27日 メール句会 8名)
当季雑詠
夜行バス結露拭へば冬の月 玲子
ミサの後善哉かこむ聖夜かな 美智子
煤逃げや帰りにケーキか饅頭か 瑠衣
温もりは土からのもののっぺ汁 なおよ
彼の友とメタセコイアの落ち葉踏む 文
達筆が無事を語るや年賀状 順子
行く年や終ひし実家の跡に立ち まり子
師走てふ手も足も気もせわしなし 睦美
題詠:湯豆腐・年用意
きつちりと並ぶ母の字年用意 玲子
湯豆腐やことことのほか音はなく 瑠衣
湯豆腐やみな聞き上手になつてをり 美智子
孫も子も来ず愚図愚図と年用意 なおよ
湯豆腐や母と味はふ齢となり 文
炬燵へと入ればずるずる首までも 順子
平戸海地元沸き立つ冬巡業 まり子
子の戻る部屋の掃除や年用意 睦美
(ももたなおよ記)
熊本句会(15日 通信句会 4名)
兼題(笹子、日向ぼこ)7句出句5句選
落葉掃き箒は魔女に返しけり 佐竹佐介
笹子鳴く夫は昭和を抜け出さず 若松節子
辻堂や白寿卆寿の日向ぼこ 北野沙羅
やさしさの眼の姫だるま春を待つ 加藤裕子
(加藤裕子記)
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