2024年11月句会報告

ZOOM句会


深川句会(13日/15名)

大谷主宰 選

第一句座
【特選】

来る年の空へ掲げよ大熊手      神谷宜行
矍鑠と刈上げ餅をくばりゆく     大場梅子
いまにして母へ勤労感謝の日     大場梅子
天上の残り福かけ大熊手       園田靖彦
御贔屓の極上熊手大手締め      園田靖彦
狐火の一つ大きく虚子の恋      篠原隆子
ホウホウと問答したき梟よ      上 俊一
狂はずにいつもの桜帰咲       上 俊一
どぶろくやをろち退治の甕八つ    菅谷和子
名の松の鱗ざらりと冬隣       仲田寛子
身にしむや波郷の視線二眼レフ    西川遊歩
強霜の母校なりしもなつかしき    城田容子

【入選】

あをあをと闇を引つ張り鰯網     谷村和華子
短冊の文字の繊細波郷の忌      谷村和華子
笑ひつつバスに乗り来る熊手かな    西川遊歩
波郷忌も砂町銀座セールの声      西川遊歩
集うてもてんでん勝手老い小春     上 俊一
いつのまに貧しき国に初氷       菅谷和子
波郷忌や露地の夕陽に雀どち      越智淳子
初雪やこよひ小樽の鰊宿       長野いづみ
逝きし人木守となりて村なかに     神谷宜行
糶の果てわが値聞きをるずわい蟹    園田靖彦  
奈良やいま四臂ゆたかに冬に入る    篠原隆子
杖つくや杖来て譲る藪からし      臼杵政治
黄千両赤い千両色づきぬ        那珂侑子
ふるさとはますます元気九州場所    那珂侑子
くちばしでくいと指図や鴨の親     仲田寛子

第二句座 席題 (枯蓮 大根 白鳥)

【特選】

弁天を恋ひて狂ひて蓮枯るる      城田容子
シベリアの風はしろたへ白鳥来     石川桃瑪
蓮の骨折れたる水の余白かな      神谷宜行
遅れ来て大きく美しき白鳥よ      臼杵政治

【入選】

夕暮の白際やかに大根市        越智淳子
白鳥に靴をとられて泣いた日よ    長野いづみ
若冲の寝釈迦二股の大根        城田容子

(篠原隆子記)


東京ウェブ吟行句会(17-20日 夏雲システム 22名)

吟行地:御岳山
兼題:冬の月、セーター、蕪

蕪擂つて離乳食めく母の膳     金澤道子
冬の月帯固く恋捨てにゆく     稲垣雄二
何処で誰刺してきたのか冬三日月  岡村美沙子
セーターに編み込んでゆく祈りかな 石塚純子
姥捨の姥眠るころ冬の月      藤英樹
動かざるひかり一枚冬の滝     谷村和華子
セーターを被るしばしの闇の中   片山ひろし
枯れ果ててレンゲショウマはまぼろしに 菅谷和子
鰤の味存分に沁み蕪寿司      石川桃瑪
山深く御師の育てし蕪かな     神戸秀子
セーターの古書肆の匂ひ脱ぎしかな 上村幸三
むささびと滑空したき冬銀河    大平佳余子
セーターに怒りの乳房くつきりと  安藤文
月冴ゆる更地となりし母の家    神谷宣行
大いなる蕪となりたる坐禅かな   関根千方
街騒を抜けて機窓や冬の月     松岡伴子
冬の月犬は抱かれて逝きにけり   那珂侑子
狼はわがふるさとの守り神     大場梅子
家出してすごすご戻る冬の月    園田靖彦
朝霜を踏みて登校御岳の子     原京子
酔い覚まし五臓六腑へ蕪汁     臼杵政治
いつもより家路は遠し冬の月    越智淳子
大蕪の泥を拭へば輝いて      長野いづみ

(関根千方記)


埼玉句会(24日 埼玉会館 5名)

神の留守女房も留守ぞさて何を    市人
時雨るるや民意はあてにならぬもの
ぐうたれの主なれども勤労感謝の日  靖彦
晩年の一茶に妻子小春かな
而して蠅が手を摺る小春かな     宣行
厄年の来ることのなき寒さかな
容赦なくあがる物価や一葉忌     つねお
若者のら抜き言葉の寒さかな
自らを褒めて勤労感謝の日      ゆき
亡き父へ深く勤労感謝の日

(萬燈ゆき記)


鎌倉吟行句会 (3日 葉山 10名)

第一句座  (7句出5句選)
バス停をいくつも歩く老の秋  侑子
実南天朱朱朱を蜘蛛に見せ   恵美子
加賀からも良き人来たり秋うらら 健
富士山のてつぺん見ゆる雁渡し 道子
小さき手の能登への募金七五三 淳
海岸に沿うてバスゆく小春かな 美津子
帰り花帰らぬ人を思ひけり   英樹
新松子天皇ご一家拾はるる   益美
秋の陽をウインドサーフィン羽透けて 淳子
悠悠と日のかけら吐く冬の鯉  和華子

第二句座  (嚏/鰯 /北風 3句出3句選)
大くさめしても笑はぬ女かな  英樹
くしやみして音ひろがりぬ部屋一人 淳子
北風や万年筆の掠れ文字    淳
朝市の鰯十匹つみれとす    益美
その太き指に割かるる鰯かな  美津子
くしやみしてしばらく元の顔ならず 道子
迷はずに朝どり鰯一盛買ふ   侑子
北風やじつと汽車待つプラハ駅 恵美子
水槽の中に鰯の銀河あり    健
青き闇ごと引きにけり鰯漁   和華子

(谷村和華子記)


愛知吟行句会(14日 名古屋城菊花展・名古屋市市政資料館)

 冬といえども、まだまだ暖かい曇り空の下、名古屋城の正門に集合し、西之丸跡の菊花展を見て、資料館へ移動した。ここは大正11(1922)年に名古屋控訴院・地方裁判所・区裁判所として建てられ、「虎に翼」など多くの作品のロケ地となっている。会議室や留置場などを見学し、館内の喫茶店でランチ、その後集会室1で句会。

水ごけの水たつぷりや菊千輪    恵美子 
菊作り三英傑のごとく立つ     春日美智子
独房に高き窓あり冬日和      肇  
菊花展江戸肥後伊勢が一同に    楓 
冬日射るステングラスに罪と罰   正博 
白菊の月の光のごとく咲く     通江 
菊花展五平餅食べ帰りけり     雄二

(稲垣雄二記)


岐阜句会(28日 岐阜市西部福祉会館)

第1句座(兼題 冬麗、河豚,風邪)

冬麗高層階より港見る       上松美智子
食べ過ぎて心痛むや河豚汁     春日美智子
冬うらら歩きはじめし子と公園   通江
冬うららまばゆく光る鳰の海    恵美子

第2句座 当季雑詠

ひつぢ田や昨日の雨の空映す    上松美智子
生と死のはざまにふつと冬の蝶   春日美智子
町なかの原つぱに葱育ちをり    通江
まくれなゐ土の力のさつま芋    恵美子

(梅田恵美子記)


京都句会

古志京都句会11月は、予定どおり通信句会と対面句会を実施しました。

対面句会は、句会場の都合でいつもの第3水曜日ではなく、第2金曜日の8日に実施しました。結果は次のとおりです。 
第1句座5句出句5句選句(うち1句特選)。第2句座席題(「蜜柑」「石蕗」「初時雨」「水始めて氷る」「海鼠」「枯蓮」)6句出句6句選句(うち1句特選)。参加者5名。

おづおづと未来をのぞく冬帽子    りえこ
大仏の喉に刺るや蓮の骨
戯事を聞き流しては蜜柑剥く     佳澄
水屋には仕切る人なく石蕗の花
裏道は火鉢に小菊咲かせゐて     いほり
なんとしよう生まれ変はりてなまこかな
飛んでゆく車窓烈火の櫨紅葉     欣也
水始めて氷る山家の懸樋かな
パパは指折つて句作り七五三     茉胡
坂道に「ファイト」「もうすぐ」石蕗日和 

12月は、第1土曜日の7日に、主宰指導の句会を知恩院和順会館で実施しますので、通常の対面句会はありません。

11月通信句会は夏雲システムを利用して実施。古志11月号の特集「虚子」から、京都句会メンバーであるりえこさん、雄二さん、淳子さんのエッセイ、そして、りえこさんの「ふるさと歳時記11月」、さらに米花さん作の絵手紙(焼芋)からの連想句4句以上を含め,8句投句,選は特選1句,入選7句で行いました。17名参加。

まくれなゐ土の力のさつま芋     恵美子
針穴に糸の通らぬ夜寒かな      米花
秋天やポストへ杖の三百歩      英二
芋掘つて我ら大地のふところに    和華子
寒月やなんと大きな虚子の影     雄二
長屋門潜りて娑婆は空つ風      佳澄
かき集め詰めても軽し落葉籠     みさ子
うつし世の荷物を捨てる枯野かな   悦子
うかうかとロマンス詐欺や甘藷掘る  りえこ
ただごとの俳句が愉し日向ぼこ    杳平
陶然と虹を見てをりインバネス    美那子
寝て見ればものみな違ふ子規忌かな  美恵子
俤をお前と呼んでおでん酒      忠雄
するめも焙り家族輪になる火鉢かな  初男
面影は元気な子規よ冬温し      淳子
大虚子のうしろすがたか去年今年   久美
焼芋や恋の悩みを聞く羽目に     茉胡

 12月以降も通信句会、対面句会の二本立てで行う予定です。12月は前記のとおり、主宰指導の句会ですが、来年1月以降の対面句会は、原則として第3水曜日に実施します。対面句会、通信句会に参加希望の方は、いずれも氷室茉胡宛の次のメールアドレス、あるいは古志誌上に掲載の電話でご連絡下さい。メルアド:mako10himu6@nifty.com                     

(氷室茉胡記)


奈良句会

ベランダの一人茶会の小春かな    正子
伎芸天障子を通る鳥の声       まち
海の風山の風吹け大根干す      雄二
煮凝や急遽コーヒーから酒に     まこ
南大門黒白しるし冬の月       淳子
SNSに翻弄されて虎落笛       洋子
この世へと嬰は命の大くさめ     美那子
トランプを表に返す去年今年     忠雄
木枯の奥にもの焚く匂ひかな     久美
代々の嫁が使ひし初鏡        悦子
瓦礫より取り出す能登の初鏡     りえこ

(きだりえこ記)


大阪句会

メール句会報告(雑詠7句出句、5句選)

鯛落ちて月は静かに瀬戸の海    美那子
芭蕉忌や年々募る旅心       茉胡
機嫌よき赤子の喃語秋高し     歌子
新築は娘の香り秋の風       一爽
稲にほふ入日まぶしき風の道    久美
秋耕やぽつんぽつんと耕転機    誠
惚れるとは好きすぎること衣被   伸一
木道のひたすら分ける草紅葉    頼温
晩年へ少しの華を草の花      美栄子
天高し鳥の目で見る瀬戸の海    百合子
たましひを遊ばせて聞く雁の声   りえこ
秋思とはかくも静かに日の暮れり  みつこ
一枚の皮が頼みの熟柿かな     陽子
冬支度買うべきものをかぞえつつ  泰子
黒板に数式の跡冬に入る      洋子

席題Zoom句会報告 席題(冬籠 冬銀河 赤)3出句、3句選)

深吉野の榾あかあかと坊泊り    久美
赤ければ古セーターも暖かく    歌子
初時雨幡の残欠赤深し       りえこ
もう会へぬ友を想ふや冬銀河    洋子
冬銀河八十路越えても師の言葉   美那子
俳句とは皆で作る冬銀河      真理子
信州の住人ここに冬銀河      伸一
沈黙の詩の賑やかや冬銀河     百合子
静寂より眺むる地球冬銀河     誠
かすれたる定規の目盛り冬籠    みつこ
赤かぶを煮込みて温し冬籠り    頼温

(木下洋子記)


松山句会(23日 メール句会 12名)

兼題:夜寒、冬の星、おでん、鶴、ラグビー  5句出句5句選

定位置を定め施設に冬日和      伊都夫
池の面をゆらさず鶴のあゆみけり   陽市
こぶし一つ詰めて新客おでん酒    まさし
亡き妻の星はいづこぞ冬の星     薫
二の腕をさすりてをりぬ夜寒かな   喜久子
今日もまた一人夜寒むはさみしけり  夕未子
ラグビーや傷の数だけある誇り    真樹子
冬の星がんばれよっていっている   紫春
ハチ哀れ亡き主人待つ夜寒かな    博山
小説と寝酒が進む夜寒かな      和弘
帰路急ぐペダル漕ぐ子に冬の星    真奈美
ひとしきり妻の咳きく夜寒かな    まこと
冬の空銀河以前の光満つ       博山
毎年よアラスカの鮭捕りに行く    紫春 
深々と熊の爪痕冬の星        真樹子
凍鶴の神々しき姿して        夕未子
丹頂の百の目と逢ふ鶴居村      喜久子
舞い降りて鶴一斉に鳴きかはし    薫
おでん屋台顔だけは知るなじみ客   まさし
結ぶほど見えてうれしやふゆの星   陽市 
施設にも良き友ありて冬ごもり    伊都夫
たまさかにサッチモをきくおでん酒  まこと 

(木下まこと記)


福岡句会(23日 早良市民センター 9名)

第一句座

風少し入れて小春の授乳室      幸子 
尺八になるが願ひや火吹竹      民也 
砂浜に砂の城ある小春かな      久子 
熱燗や言はねばならぬことばかり   和子 
麗しや震へてひらく冬薔薇      龍梅 
城跡の果てなき磴や木の実降る    悠 
俊太郎逝きて戸惑ふ冬安居      紀美代 
冬じたく旧海軍の港町        博人 
まつさきに子供が見つけ冬すみれ   真知子

第二句座(席題:襟巻き、枯)

襟巻きの狐の顔をしみじみと     和子 
冬枯れの街にやさしき曲を聴く    悠 
ただ一つ母の形見のショールかな   龍梅 
マフラーに星の瞬き包み込まむ    久子 
マフラーで鎧ふほつぺや女子高生   民也 
一枚の枯葉なびきて明日を待つ    紀美代 
海兵のマフラーを振る別れかな    民也 
枯菊を焚く真つ白の煙かな      真知子

 (斉藤真知子記)


長崎句会(29日 まり庵 9名うち4名は欠席投句)

当季雑詠

愚かなるリーダーの国山眠る     睦美
秋天の大仏揺るがし人の波      まり子
たっぷりと島の陽と風甘藷干す    美智子
二足目のリハビリ靴や石蕗の花    玲子
懐手今朝の軍艦ひいふうみ      瑠衣
歯固めの小石を添へて智慧の粥    なおよ
秋桜や子らの帽子の見え隠れ     順子
秋茜をらぬ今年やCOP29     文
うそ寒や人皆終には壺の中      弘美

席題 絨毯・おでん

色褪せし絨毯シルクロード模様    睦美
絨毯や異邦の旅の円舞団       美智子       
同じ種狙ふきょうだいおでん鍋    玲子
絨毯や空とぶ夢の只中に       なおよ
絨毯に乗つて加勢やペルシャ兵    瑠衣
年男夫へ買ふ龍柄絨毯        まり子
おでんこそ屋台が美味し風の中    弘美

(ももたなおよ記)


熊本句会(15日 通信句会 4名)

兼題(小春、神の留守)7句出句5句選

胸板をつらぬく風や波郷の忌     佐竹佐介
小春日や窯再興の便り来る      若松節子
鶲遊ぶ杭に茶会の札括る       北野沙羅
神の留守手水渾々龍の口       加藤裕子

(加藤裕子記)

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