2022年9月句会報告

第31回YouTube句会(24日 47名)

大谷主宰選
【特選】
 升さんよ伊予青石は月に濡れ    神戸秀子
梨を剥く親指元気もう一周     久嶋良子
秋風や昼寝のうちに古希を越ゆ   稲垣雄二
からすみになる頃来るよ酒下げて  岡村美沙子
亡き夫の杖をささへに歩く秋    那珂侑子
柿食ひの君へ振舞ふやまと柿    田村史生
向はばや抱つこおんぶで月の座へ  石塚直子
名月や敗けて兎は餅搗きに     三輪憲

【入選】
恋するな男は風ぞ龍田姫 神谷宣行
台風一過吾子抱くごとく菊起こす  稲垣雄二
庭の枝に頬白うちの子になるか   臼杵政治
はてもなし夜なべの妻の袋貼り   片山ひろし
三十二本つつがなき歯ぞ今年米   神谷宣行
満たさばや枡は大垣新走      仲田寛子
濃竜胆まぜて引き立つ供へ花    大平佳余子
はつらつや初鴨あげる水しぶき   仲田寛子
潮時を待つもたのしや鯊の岸    石川桃瑪
風の道稲穂べつたり撫でつけて   米山瑠衣
四十の父が待ちをる天の川     西貝幸子
八分方熟れし通草を腰に結ひ    原京子
兄の忌よ年ごとに秋深みゆく    上村幸三
敬老会ほんにアクリル板が邪魔   ももたなおよ
だれかれのついでに参る子規忌かな 臼杵政治
父がいま顔出しさうな芋畑     稲垣雄二
品格の相撲すなはち千代の富士   齋藤嘉子
休戦ぞ新米十斗炊き上げむ     喜田りえこ
新藁を干せば沁みゆく日よ月よ   佐々木まき
台風が吹けば酒濃く漁師小屋    丹野麻衣子
(記:丹野麻衣子)


Zoom句会


郵便句会

大谷弘至主宰選

◎特選
秋水に乗りて行きたや桑名まで   小島楓
お花見の古木ぽつきり台風禍    加藤久子
桐一葉吾が骨どこへ埋めやうか   北林令子
担がれて背筋真つすぐ案山子かな  上俊一
兜太の鮫ことしも庭に終戦日    北林令子
コウコウと雨乞ひ唄か秋鴉     春日美智子
月の夜は結びの地にて連句せん   小島楓

○入選
ペガサスの方形確とやつと秋    上俊一
秋の雲母の抱きしややは我     山下充子
蕎麦殻の夫の枕を縫ひ夜長     北野沙羅
耳たれて月のうさぎも帰るころ   小島楓
秋澄めり朝刊捲る勢に       西川東久
名月と歩けど月は友ならず     藤井洋子
露の世に鍛へるあはれ足と腰    北林令子
風に立つ真一文字の案山子かな   北林令子
篤農のなじみの案山子今年なく   上俊一
港江(みなとえ)に鰡は跳ぶ跳ぶ八丁櫓の舳  鈴木千恵子
ゆづりあふやうに揺れつつ秋桜   加藤久子
沈下橋下に見下ろす萩の風     梶原夕未子
袷着て見返り美人のつもりかな   水谷比嵯代
そば打つて友と今宵は月見酒    神谷和子
有り合ひの婆の持て成し月の家   北野沙羅
初物の栗を供へて月今宵      神谷和子
結局は一人となりぬ夕月夜     梶原一美
なにはさて今日の芒をばさと生け  春日美智子
干上がりし川向うよりつくつくし  春日美智子
月見草河原の石のまだ熱く     関君子
新涼のみどりこぼして摘む穂紫蘇  関君子
(氷室茉胡記)                


東京ウェブ吟行句会(18-20日、夏雲システム、20名)

吟行地:鴫立庵とこゆるぎの浜周辺(大磯)
兼題:竜田姫、障子貼る、冬瓜

鴫一羽いま俳諧の風にのり    関根千方
この庵の木の実ひとつも詩歌かな 藤英樹
一山の僧が総出の障子張り    片山ひろし
こゆるぎの浜はすぐそこ新松子  大平佳余子
旅立ちの西行惜しむ尾花かな   大場梅子
禅寺の厨に届く冬瓜かな     石塚純子
来し方はすべてご破算障子張る  園田靖彦
全山に恋の火燃やし竜田姫    神谷宣行
冬瓜を旨しと思ふ齢かな     原京子
障子貼るかたはら嬰のよく眠り  わたなべかよ
虎御前のかんばせほのと初紅葉  神戸秀子
天守閣みな無口なる月の客    持田明子
男手の仕事と継ぎて障子貼る   越智淳子
冬瓜の重さ実りの重さかな    吉田順子
厄介と知りつつ買ひし冬瓜かな  萬燈ゆき
父母の息はぴったり障子貼る   松岡伴子
龍田姫西行像に袖を振り     菅谷和子
冬瓜のごろんとありて月上がる  長野いづみ
斧みがけ安保世代の枯れ蟷螂   服部尚子
円位堂開けてくれたり虫のこゑ  那珂侑子
(関根千方記)


埼玉句会(25日、埼玉会館、5名)

みのる恋みのらぬ恋も小鳥来る    市人
こんな日もあると云ひつつ新走り
千の掌の観音さまの秋思かな     靖彦
飲み干せぬ泡の一缶秋思かな
名月やどうにもならぬ主義主張    つねお
赤子生る秋の彼岸の中日に
遠ざかるバブパイプの音小鳥来る   すみえ
渡良瀬に雲流れゆく秋彼岸
君逝くや菊の枕の間に合はず     ゆき
天高く俳句仏となりにけん
(萬燈ゆき記)


岐阜句会(22日 岐阜市西部福祉会館 5名)

第1句座 兼題(秋灯、馬肥ゆ、菊膾)
二階屋は音よく響き秋灯下     春日美智子
秋灯作句呻吟快楽かな       上松美智子
書取が日課の夫や秋灯       沙羅
菊なます祖父のお酒は寡黙なり   通江
馬肥ゆる御嶽山は霧のなか     恵美子

第2句座 当季雑詠
ダンスしよう運動会のプログラム  春日美智子
日高梨瑞々しきや送りくれ     上松美智子
零余子採頭にコツと降ってきし   沙羅
誇らしく朽ちてゆくなり鶏頭花   通江
早稲の香や木曽路は今も山のなか  恵美子
(梅田恵美子記)


京都句会

 古志京都句会、9月はいつものとおり、通信句会と対面句会を実施しました。

 来月からも、毎月、通信句会と対面句会の二本立てで行う予定です。対面句会は、これまでの第4日曜日を第3水曜日に変更予定。午後1時からこどもみらい館で実施予定。

 9月通信句会は夏雲システムを利用して実施。事前に送った初男さんの写真と文章(初男さんが体験された奥の細道を巡る旅のシリーズ第6弾、出雲崎)、そして米花さん作の絵手紙(南瓜)からの連想句4句以上を含め,8句投句,選は特選1句,入選7句で行いました。13名参加。結果は次のとおりです。

鉄鉢に受けて銀河のひとしづく     忠雄
佳き人と酒酌み交はす月の宿      りえこ
妻入の奥は秋潮日本海         美那子
みちのくや胸の奥まで月さして     久美
朝に佐渡夕に銀河や出雲崎       初男
活けられてすまし顔なる花かぼちや   美恵子
佐渡ひとつ浮き上がりたり望の潮    陽子   
ロンドンに病める漱石背蒲団      嘉子
戦争や冬瓜といふ処世術        雄二
道頓堀いつまで残る暑さかな     (木下)洋子
ジーンズの膝の裂け目や小鳥来る    英二
翁さへおどろく越の天の川       米花
秋深し佐渡を遥かに良寛像       茉胡

 対面句会は、9月21日(水)こどもみらい館で実施。参加人数の関係で、席題(「曼珠沙華」「秋茄子」「夜長」「秋の暮」)を含む10句出句8句選句の1句座で行いました。3名参加。

何もせでつるべ落しに夜の来て    (藤井)洋子
天高しちぢみし背たけ四センチ
水漬きても咲きつづけるや曼珠沙華  (木下)洋子
きな臭き地上は嫌や蛇穴へ
何見ても君の俤秋の暮         茉胡
長き夜や双子交互に泣き授乳

 通信句会、対面句会とも参加希望の方は、いずれも氷室茉胡宛の次のメールアドレス、あるいは古志誌上に掲載の電話でご連絡下さい。メルアド:mako10himu6@nifty.com
(氷室茉胡記)                    


奈良句会(25日 夏雲システム 11名)

5句出句5句選
熱の子の検温恐し朝寒し    まこ
山椒の実今はじけんと紅潮す  美那子
零余子飯詩歌の心噛みしめん  忠雄
丹波路の登校自転車霧分けて  まき
初紅葉パリツと揚げて運ばるる 悦子
団栗で夫のポケット膨らみぬ  洋子
稲の香や佐保路をめぐるバス路線 豊
集落に稚の泣き声豊の秋    正子
倒木に命の香り野分後     雄二
秋風や転調つづく円舞曲    久美
三井寺の大鐘叩け鉦叩     りえこ

古志会員ならどなたでも参加出来ます。参加希望の方は、喜田りえこ宛で次のメールアドレス、あるいは古志誌上に掲載の電話でご連絡下さい。
メルアド:kidarieko@kcn.jp
( 喜田りえこ記)


大阪句会

〇メール句会  雑詠7句出句、5句選  
横井初恵さんへの弔句を詠みました。
手紙読む如くに句集晩夏光      美那子
五山一雨不意の別れと誰そや知る   美栄子
大文字ともに拝みし人はるか     久美
萩の咲く能勢にいませし人逝きし   泰子
気遣ひを看護の夫へ花芙蓉      百合子
遺る句に夫の句数多銀河濃し     茉胡
車椅子捨てて花野へゆかれしか    みつこ
逝きしひとの思い出いくつ秋桜    豊
生きるとは俳句詠むこと鰯雲     洋子
読み返す句ごとの想ひ秋の雲     歌子
月光や地蔵菩薩となられしか     りえこ
散りてなほ夢を見てゐる帰り花    陽子

〇Zoom席題句会  席題(りんご・台風・子規忌)3句出句、3句選
みちのくの林檎熟れゆく星明り    久美
台風の逸れて安堵のりんご園     りえこ
熱の子に祖母の皺の手林檎むく    歌子
台風の目一つにして迷走す      豊
台風の圏外にゐてどしやぶりに    みつこ
猛烈台風いなして庭の古木かな    百合子
身ほとりを大きく詠まん子規の忌に  美那子
子規の忌や母と妹呼ぶ声が      洋子
(木下洋子記)


松山句会(16日 メール句会 11名)

兼題:水澄む、秋の虹、花野、秋遍路、白露、蚯蚓鳴く、竹の春 5句出句5句選
水澄むや屋号でわかる峡の村    崇
これよりは影を道連れ秋遍路    紫春
秋の虹足を速める山頭火      まさし
産土の垢にまみれて蚯蚓鳴く    真樹子
山門にきれいなお辞儀秋遍路    真奈美
疫病の三年孤独秋の虹       陽市
黙々とただ一筋に秋遍路      夕未子
秋の星なんと小さき我が人類    博山
富士よりの湧水あつめ水澄めり   薫
いづこにも妻の音無き秋灯下    伊都夫 
遍路傘色なき風となりにけり    まこと
振り向けばいつか消えをり秋の虹  伊都夫 
恋蜥蜴未練に残す尻尾かな     紫春 
ゆきゆきて花野の果ての大花野   まさし 
四万十川魚影あらはに水澄むか   陽市 
秋の虹父の齢へあとひとつ     真樹子
燈火親し拡大鏡で聖書読む     薫
登り来て空間近かなる花野かな   夕未子
コーヒーのブレンド変わる白露かな 真奈美
じやんけんに勝てば十歩の花野かな 崇  
秋の虹女王陛下をお迎へに     紫春 
水の音風の音みな白露かな     まこと 
(木下まこと 記)  


福岡句会(24日)

曼珠沙華花道となる石舞台      和子
娜やかに老人の日のフラダンス    國光   
満月やもったいなくて眠られず    充子
秋風や隠坊骨の部位を言ふ      祥子
陸に置く露一滴や古端渓       桃潤 
老人の日の鏡中の老人よ       民也
秋刀魚焼くアンクルトリスの小瓶かな 博人
静けさの宮の小径や濃竜胆      久子
売り家の表も裏も曼殊沙華      修
揺れ動く心を正し秋澄めり      龍梅
この国の言葉うつくし水澄めり    真知子  
(斉藤真知子記)


長崎支部(23日 まり庵 8名、うち3名はメール参加)

当季雑詠 5句
大国は戦の気配芋食らふ       あや
葛咲くや風車ひたすら発電中     なおよ
秋の日や影踏みの鬼すぐ替はり    美智子
名月を背負いて狐現れし       睦美
出水後綿雲ぽかぽか浮くばかり    弘美
朝練の坂道ダッシュ風さやか     玲子
大宮殿空をはみ出し秋暑し      まり子
針の傷背に新し下り鮎        瑠衣

席題2句(栗・秋彼岸)より
渋柿も待たれる孫へ干すばあば    あや
父の忌や父の栗の木栗笑まふ     なおよ
店先の柿栗梨に立ちつくす      美智子
柿の渋さへ懐かしき故郷かな     睦美
秋彼岸母と弟会へたろか       弘美
柿食ふは烏が先か田圃道       玲子
食べ頃の柿の色味や青き空      まり子
剃り跡のみずみずしさや秋彼岸    瑠衣
(米山瑠衣記)


熊本句会(国際交流会館 4名)

第一句座  
水の秋人の会話もゆつたりと     裕子
生まれるも死ぬるもこの家稲の花   裕子
猪の頭を祀る磐の上         佐介
稲の花転た寝の夢忘れたる      佐介
子ら走る殉教墓地や律の風      茉莉子
輪唱の子守唄なり稲の花       茉莉子
鬼城忌のゆつくり歩く痩鴉      榾火
秋暑しビルより低き立田山      榾火

第二句座(席題 青蜜柑、厄日)
独り居の心地よき夜や青蜜柑     茉莉子
漂泊の咽を潤す青蜜柑        佐介
風祭男をどりに色気あり       榾火
(記 今村榾火)

                 

  

   

  

 

                 

 

 

 

 

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