2022年11月句会報告

第33回YouTube句会(19日 45名)

大谷主宰選

【特選】

楽園をはるかに離れ勇魚獲る     木下まこと
海界やどんと波来よ勇魚捕る     喜田りえこ
子探しの伊勢まで来しや母鯨     神戸秀子
ねんねこや硝子に寝顔確かめて    臼杵政治
さやうなら庭の枯草春にまた     越智淳子
親子して腰に鶫をぶらさげて     篠原隆子
名画座てふ落葉あつまりやすき場所  木下まこと
その目にて壁睨みしや達磨の忌    鈴木榮子
角持たぬ鹿よ預かれ神の留守     矢野京子

【入選】

鮟鱇やうかと恋してトロ箱へ     澤田美那子
ふる里の駅は無人に日短       那珂侑子
句の道や林檎の皮の切るるなよ    稲垣雄二
一年やさざんくわ咲いて妻は癒ゆ   神谷宣行
寒灸や快を貪る足三里        奈良握
一心に捏ねよ蕎麦掻き無心なれ    西川遊歩
淀川を上る通夜舟翁の忌       大平佳余子
鹿の子と背高比べ七五三       矢野京子
赤茶けた目貼に目貼ことしまた    藤倉桂
子等の声去り団栗が残されて     ももたなおよ
寝坊助やマスクの似合ふ班長さん   奈良握
納骨の夜のふろふき大根かな     喜田りえこ
戦争が鍋焼き饂飩の値を上げて    三角逸郎
山粧ふ十二色では描ききれぬ     谷村和華子
初猟やほらすぐそこと目の合図    臼杵政治
鞴祭ごとばんさんとみな慕ひ     大場梅子
はちきんのよくとほる声ざぼん売り  大場梅子
色葉いろは我が心にぞ散り積もれ   谷村和華子
ひだまりや十一月は雀色       木下まこと
(記:丹野麻衣子)


Zoom句会


郵便句会

大谷弘至主宰選

◎特選
市田柿わつと広がる伊那の秋       北林令子
とびはぜと干潟を歩く小春かな      小島楓
綿覗くほつれが愛し古蒲団        西川東久
大黒天さながら烏瓜の種         北野沙羅
金秋や秀衡塗のわんこそば        加藤妙子

○入選
紅葉山笑まふあなたも齡を取り      山下充子
わだかまる小怨拭ひ冬支度        西川東久
芒原思ひ出のみち亡き母と        伊達公子
つぎは何時か欠けゆく月を夫と見て    伊達公子
一本のらふそく縷々と夜学生       神永秀郎
進水式餅をばら撒く秋の湾        神永秀郎
天龍の川霧あびて市田柿         北林令子
短日や一針づつのこぎん刺す       水谷比嵯代
天龍の群青一筆冬に入る         鈴木千恵子
願はくは小春のやうな句のこゝろ     神谷和子
冬支度せねばせねばと云ひ云ひて     藤井洋子
椎の実の降る音ページめくる音      関君子
我らとは別に一組林檎狩         梶原一美
田仕舞の煙たゆたふ産の神        加藤妙子
冬の岩海鵜ひたひた足ぬれて       山下充子
老夫婦林檎選り分けもの静か       梶原一美
反骨の長き反り身や枯蟷螂        白石勉
ながらへて木の葉時雨の径をゆく     伊達公子
はたちより医者通ひの身枇杷の花     梶原夕未子
秋冷のつばさを閉じて蝶眠る       関君子
一枚の木の葉のごとき吾が半生      北林令子
鴫立ちて冬の青空残りけり        小島楓
干して揉み揉んでは干して市田柿     北林令子
(氷室茉胡記)                   


埼玉句会(27日、埼玉会館、5名)

一ツ覚え一ツ忘るる小春かな   市人
凩やいつも捨て身でゐる男
俳句とは着ぶくれさせてならぬもの
燗熱しガード下から天下説く   靖彦
行き来する喪中葉書や十二月
開戦の臨時ニュースや十二月
焼芋や戦火の灰にほつこりと    宜行
凩や星を蹴りつつ帰還せり
燃ゆる火の芯は透けたり十二月
小春日や銚子電鉄とつぱずれ   すみえ
宝くじ売場に並ぶ冬帽子
手のひらに命尽きたり雪兎
退院の夫あたらしき冬帽子    ゆき
ねんごろに古本市を冬帽子
戦火からやうやう逃れ冬帽子
(萬燈ゆき記)


東京・神奈川吟行句会(12日、深大寺神代植物園、6名)

小春日和の中、深大寺は多くの七五三参りの家族で賑わっていました。名物の深大寺蕎麦を頂いて、皆で波郷忌の近い波郷のお墓を詣でました。

バス降りて枯れ葉のにほひ波郷の忌 石塚純子
石像の硬き乳房や冬薔薇
紅の黒になりゆく冬の薔薇
借命の菊を手向けん波郷の忌       大平佳余子
鬼蓮の枯葉を刈るも一仕事
落葉掃く音につられて鴉啼く
残る薔薇香りていのち余すなし       神谷宣行
大温室翼ひろげて空を抱く
鳥たちの歌ふ相聞冬に入る
惜命の五十余年や紅葉散る       大場梅子
霜の花咲かせ波郷の永久にあり
小春日を抱く御仏とこしなへ
良き知らせあり大輪の黄菊かな       菅谷和子
新蕎麦や波郷忌を待つ深大寺
落葉浴び我もふりゆくをんなかな
冬空に大手広げて樹と寺と       原 京子
銅鑼の音子ら目覚めさせ七五三
冬薔薇に頬触れるほど車椅子
 (神谷宣行記)


鎌倉吟行句会(6日/大路ビル・カルチャースペース鎌倉/8人)

江ノ電で、まずは極楽寺へ。宝物館(春・秋の限定期間のみ開館)では、御本尊の「木像釈迦如来立像」はポスターと録音解説でした。がっくり。次に御霊神社へ。例年この時期には七五三を祝うご家族を見かけますが、この日は仏滅のせいか(?)皆無。

第一句座:吟行句・雑詠句
まつさらな句帖にたたむ冬日かな  英樹
ひつそりと香る樒も返り花     美津子
身にしむや製薬鉢を寺宝とし    道子
松手入あと一本の昼休み      桃瑪
かがまねば山門通れず露の世の   侑子
鐘ひとつ山茶花一輪とどまりて   恵美子
暮の秋風より白き石を積む     和華子
小春日の額秀づる禅師かな     はるみ

第二句座:席題「襟巻」「白」
白猿を名乗りし気概今朝の冬    道子
襟巻や酒はバーボン一筋で     英樹
冬立つや絹雲白くうつくしく    美津子
空港にマフラー一つ買ひにけり   侑子
ソフト帽襟巻鎌倉文士かな     はるみ
尾白鷲制空圏を決したり      桃瑪
マフラーをくるりふた巻き孤を遊ぶ 和華子
白削りのせても出来ぬ秋展へ    恵美子

(長井はるみ記)


愛知吟行句会(10日 名古屋市藤前干潟) 

杭に立つみさごの瞑想冬干潟    恵美子
飛び立たむと天を仰ぐや大かわう  春日美智子
冬鷗ウクライナより渡りしか    尾燈子 
とびはぜの干潟を歩く小春かな   楓
ハマシギの小走りにゆく冬干潟   沙羅
藤前干潟歩けば小春ついてくる   正博
シギつつく干潟に泥の匂ひかな   通江 
(稲垣雄二記)


岐阜句会(24日 岐阜市西部福祉会館 5名)

第1句座(小春、冬の蠅、石蕗の花)
朝日浴び墓の草取る小春かな      上松美智子
縁側にサボテン取り込む小六月     春日美智子
冬の蠅みかけぬどこにひそみゐる    通江
うまくゆく事は珍らし石蕗の花     沙羅 
剥き終へて皮うづ高し吊し柿      恵美子 

第2句座 当季雑詠
笛吹川蛇笏の一生椿咲く        上松美智子
神の留守かみつきがめが出たといふ   春日美智子
嬉々として勤労感謝の日に出社     通江 
かたぶき飛ぶハマシギの群冬日和    沙羅
補陀落の海を眺める石蕗の花      恵美子
(梅田恵美子記)


京都句会

 古志京都句会、11月はいつものとおり、通信句会と対面句会を実施しました。来月からも、毎月、通信句会と対面句会の二本立てで行う予定です。対面句会は、第3水曜日午後1時からこどもみらい館で実施予定。ただし、12月は、第2水曜日の14日に実施します。

11月通信句会は夏雲システムを利用して実施。事前に送ったりえこさんの写真と文章(奈良唐招提寺)、そして米花さん作の絵手紙(万年筆・11月)からの連想句4句以上を含め,8句投句,選は特選1句,入選7句で行いました。11名参加。
相棒は一本のペン冬籠         忠雄
天平の甍越えなむ秋の蝶        陽子
奈良は秋あなおもしろの伎楽面     久美
文机へ征露丸置く漱石忌        りえこ
枯葉とて和上の膝へ散り寄らん     雄二
石榴褒め回覧板を手渡しぬ       英二
なんどきも亡母の句ぬくし冬紅葉    美恵子
初雁や旅をせぬこの幾年ぞ       美那子
障子洗ふ夫婦老いけり労りつ      まき
和上さんの隣近所よ小六月       初男
冬日濃しメタセコイアの古代色     茉胡

 対面句会は、11月16日(日)こどもみらい館で実施。第1句座当季雑詠5句出句5句選句、第2句座席題(「大根」「山茶花」「神の留守」「冬の空」「霰」)8句出句6句選です。5名参加。
時雨して女人の消ゆる浄瑠璃寺     りえこ
冬の空解雇通告一万人
塩梅の良き味噌となり小六月      いほり
生業といふものありて冬の空
立冬やいつまで働くべきなのか     一爽
安土山越えれば違ふ冬の空       
狛犬も欠伸してゐる神の留守     (木下)洋子
常ならぬ旨みありけり大根焚
冬日集め二川合流三角州        茉胡
冬ぬくし一人暮しの父は百

 通信句会、対面句会とも参加希望の方は、いずれも氷室茉胡宛の次のメールアドレス、あるいは古志誌上に掲載の電話でご連絡下さい。メルアド:mako10himu6@nifty.com 
(氷室茉胡記)


奈良句会(25日 夏雲システム 12名)

晩年は丸くなる夫花柊         まこ
冬霧や杉千本を縫うてくる       美那子
柊の花やこぼれて京の露地       忠雄
あたたかく冬に入りたる日なりけり   まき
銀杏散る三千世界ただ中に       悦子 
梟に寝つけぬ山の宿りかな       洋子
ほのかなる雪の香してや花柊      豊
湖北郷林も鮒も紅葉せり        正子
星満天焼いも一つポケットに      雄二
夕映えてむかしの色の柿を干す     久美
コロナ禍のはや三年の寒さかな     一爽
停戦の座の采配を梟に         りえこ

古志会員ならどなたでも参加出来ます。参加希望の方は、喜田りえこ宛で次のメールアドレス、あるいは古志誌上に掲載の電話でご連絡下さい。
メルアド:kidarieko@kcn.jp
(  喜田りえこ記)


大阪句会

〇メール句会
寄れと言ふ訛うれしき芋煮かな    美栄子
飽きるほどの藷で育ちて今も好き   美那子
見事なるホトトギス咲く虚子の庭   泰子
この国の律儀のマスク秋高し     百合子
娘の笑顔いつまでも見む秋高し    一爽
大笊のからりと乾く柿紅葉      久美
毬栗を描くによろし葦のペン     みつこ
遥かなるものの一つに松茸飯     茉胡
草の中ふかく沈みて秋の蝶      豊
十五年実生の柚子が実をつけて    洋子
切り火して山の学校炉を開く     歌子
三昧の十七文字と冬籠        りえこ
そぞろ寒象は故郷の夢の中      陽子

〇Zoom席題句会  席題(短日・車・セーター)3句出句、3句選
籬越すさをしかのこゑ暮の秋     陽子
暮早しつぎつぎ点る団地の灯     歌子
短日や予定繰り延べしてばかり    洋子
短日やいよいよせまる結婚式     一爽
暮れやすき日をとどめてや糸車    久美
車座の一人抜けたる寒さかな     みつこ
万博に空飛ぶ車冬うらら       豊
荷の重き貨車の軋みや十二月     百合子
灯ともして薄暮の電車冬近し     美那子
反戦歌真紅のセーター声上ぐる    りえこ
(木下洋子記)


松山句会(18日 メール句会 11名)

兼題:十一月、小春、枇杷の花、種採る、波郷忌 5句出句 5句選
一病を忘れて歩く波郷の忌       崇
小春日やみなを優しくする不思議    まさし
波郷忌や伊予の俳人ここにあり     博山
小春てふ母の名恋し小六月       伊都夫 
死見つめた眼鏡のこして波郷の忌    陽市 
落ち会ふて姉と歩きし小春かな     夕未子 
波郷忌や空より青き海の色       真樹子 
久々に腕まくりする小春かな      和弘 
点滴を見つめうたた寝小春かな     薫 
小春日や荘子と遊ぶ蝶となり      紫春 
枯れすすむ十一月のひかりかな     まこと
月紅く蝕まれたり波郷の忌       紫春
病む友を見舞ひし庭に枇杷の花     薫  
仰ぐ子よ空ほどたかく枇杷の花     陽市
種採るや半年前の新聞紙        真樹子 
百花いま百果となるや種を採る     まさし 
掌に受けて埃は吹いて種納む      崇  
種袋折るきつと来年再会を       紫春 
冥土への道も忘れて小六月       まこと
(木下まこと記)


福岡句会(26日 通信句会 14名)

柿落ちて五百羅漢のしんがりに    民也
窓全開風と光の冬用意        久子
マネキンの尖る鼻先冬帽子      充子
あかあかと百畳敷の紅葉かな     和子
イヤホンの片方は吾に冬菫      幸子
新米を口いつぱいに頬張りぬ     國光
切干や尽くすいのちのある限り    龍梅
北風が通用口に立つてゐる      緑
水族館裏で焼いてる秋刀魚かな    博人
栗ごはん横目に窓の月の蝕      悠
松原や櫨の紅葉が飛び火せり     修
広前に地酒ずらりと神の留守     祥子
枯山に仏のこころ天井画       桃潤
鯛焼きや叱られし身をあたためん   真知子
(斉藤真知子記)


長崎支部(25日 まり庵 9名、うち4名はメール参加)                        

当季雑詠 5句
干拓地コスモスの海に分け入らん   あや
双眼鏡旅の苦労の鳥渡る       順子
大銀杏散るや樹の精貰ひませう    なおよ
薄原揺れて果て無き蓼科郷      弘美
法王の弥撒思ひ出づ時雨かな     まり子
幼な子の転ぶも楽し落ち葉かな    美智子
先ず犬が陣取るこたつの戦かな    睦美
冬紅葉母のスケッチ辿る旅      玲子
寒旱流れを寄せて河普請       瑠衣

席題2句(小春・冬薔薇)より
島影を眺め小春の句会かな      あや
ヘルソンの少年何見ん冬の薔薇    なおよ
冬薔薇ハウステンボス売られゆく   弘美
小春日和まずは心を温めん      まり子
小春日や父母の爪切り揃へ      美智子
棘ひとつごと凍てつきし冬の薔薇   睦美
庭石の影やはらかき小春かな     玲子
木道や小春に噴煙たゆたうて     瑠衣
(米山瑠衣記)


熊本句会(くまもと県民交流館 4名)

第一句座
残る虫よき声なればなほ残れ     裕子
握手して短日の道右左        裕子
三輪車のサドルが定置枯蟷螂     茉莉子
ピザパンに噛み付く夜や十二月    茉莉子
大根を抜くな引けよと叱らるる    佐介
残る虫長き振り子の黒時計      佐介
人伝てに聞く人のこと残る虫     榾火
けふ一日厨の留守を紅蕪       榾火

第二句座(席題 ラグビー、ふくと汁)
ラグビーの敗者の影も長やかに    茉莉子
荒海や大鉄鍋のふぐと汁       佐介
田舎にも銀座はありぬ河豚汁     榾火
(記 今村榾火)

                 

  

  

                  

     

          

                    

 

 

 

 

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