2022年1月句会報告

第23回 YouTube句会(29日 49名)

大谷主宰選

【特選】 
光琳にかかれば虎も初笑ひ      鈴木榮子
老いの夢一つ生まるる初湯かな    藤倉桂
冬帽子時に見栄張る元気あり     稲垣雄二
走り来る子を外套に包みけり     齋藤嘉子
年の豆あまりし豆を豆ごはん     大平佳余子
一茶の歯抜けていつもの寒雀     岩崎ひとみ
美容師と見蕩るる雪の鏡かな     久嶋良子
寒餅や雪の蓬を惜しみなく      神戸秀子
寒稽古恋の足しにはならぬかな    田村史生
ページ繰るしあはせのなか春を待つ  木下まこと

【入選】
老いのこと笑ひ飛ばすや初電話    前崎都
梅ふふむあなたまかせの五衰かな   上村幸三
その笑顔マスク越しにもやさしくて  田村史生
春耕やけふも弁当たまご焼き     丹野麻衣子
病む人を励ます春の声となれ     喜田りえこ
佐渡からのしまきや母をかき消して  篠原隆子
喘息の妻へ寒九の水汲むまむ     臼杵政治
啜らせて気に入りの牡蠣見つけよと  丹野麻衣子
まだ文字の入らぬ墓石日脚伸ぶ    那珂侑子
黒焦げの餅めでたけれどんど焼    金澤道子
春隣魚仕分くる細き腕        米山瑠衣
春立つや畳を歩くランドセル     稲垣雄二
さりとても日本よき国寒卵      矢野京子
蕗味噌が出来てご飯がいま炊けて   那珂侑子
宿題はそこそこにして初天神     石塚直子
古日記いつか消さむと鉛筆で     米山瑠衣
(記:丹野麻衣子)


郵便句会 

大谷弘至主宰選

特選
家狭し子等来て騒ぐ元日は     土筆のぶ子
愛犬と使ひしリード年惜しむ    関きみ子
老いひとり外は元日晴れわたり   土筆のぶ子
どんと焼山幸彦は煤だらけ     神永秀郎
風邪を引くなと九十の母は吾に   関きみ子
初夢のやさしき人よさやうなら   小島楓    
竹馬や皆一斉にかけてゆく     森康子
吉兆の膨らむごとし餅を焼く    加藤久子
鉛筆を尖らせ一句寒の明け     春日美智子       

入選
君がため錦へ頼む芹壬生菜     田中尚子
真清田の神は荒神てまり唄     小島楓
初釜を終へて侘助貰ひ受く     北野沙羅
野路を来てこの黄梅に会へしこと  梶原一美
空に鷹心通はす老逝きて      伊達公子
植木職淑気の庭に整へて      田中尚子 
受験生息凝らし雪踏み進む     白石勉
火の神事終へてこの身を初鏡    小島楓 
戸隠山の雪にまみるる婚儀かな   山下充子
この町に生まれし稚の初筑波    神谷和子
薺粥宇宙の息吹啜るかな      加藤久子
万の鍋鶴引いて結了鶴日記     白石勉 
凍雲を花とほぐせよ木遣歌     山下充子
(斉藤真知子記)


古志ZOOM句会


埼玉句会(23日、埼玉会館、3名)

俳句とは着ぶくれさせてならぬもの 市人
志つらぬく目刺焼きにけり
赤ん坊よちよち歩き春立ちぬ    靖彦
豆まきの豆のはづみて神の棚
バレンタインデイ朝焼けは虹いろに ゆき
愛の日の上手く焼けたるパンケーキ


東京Web吟行句会(夏雲システム、27名)

吟行地:鎌倉周辺(長谷・由比ヶ浜)
兼題:左義長、探梅、寒蜆

頬赤き女が計る寒蜆       菅谷和子
夜遊びは昔々よ寒蜆       金澤道子
しゅーしゅーと竹が泡ふくどんどかな 仲田寛子
末つ子の横向いてゐる初写真   石塚純子
子どもらは走りまはりしどんどかな 長井亜紀
江ノ電にあふるる海や日脚伸ぶ  大場梅子
探梅やあの日のままの停留所   園田靖彦
この道に果てなかりけり梅探る  萬燈ゆき
ひと網に氷まじるや寒蜆     神谷宣行
寒蜆氷の琵琶の音すなり     関根千方
くつがえる一茶論なり蜆汁    岩﨑ひとみ
冬の鳶輪を画いてゐる由比ケ浜  片山ひろし
くづれかけたるを囃してどんど焼 石川桃瑪
鶴一字舞上がりたるどんどかな  服部尚子
田を清むどんどの灰を鋤き込んで 鈴木伊豆山
寒蜆けふできること一つより   葛西美津子
女正月締めにさらさら鯛茶漬   わたなべかよ
村々の左義長に遭ふ伊那の旅   長野いづみ
左義長やおかめひょっとこ地元っ子 松岡伴子
雪を掻く天の重みを身に受けて  吉田順子
寒蜆石の音して笊に入る     越智淳子
探梅行村営のバス二人きり    持田明子
一粒の命いただく寒蜆      那珂侑子
寒月やはるけきトンガより津波  原京子
朝稽古あとの一椀寒蜆      神戸秀子
校庭の真ん中燃ゆる吉書揚    大平佳余子
(関根千方記)


愛知吟行句会(6日 一宮市真清田神社)

 JR東海道本線尾張一宮駅の改札口に元気な顔で集合し、薄曇りの下、アーケードの商店街を通り抜け、神社へと。露店もほとんど閉じて、ハレからケへ変わりつつある境内を吟行。駅ビル内で食事して、句会。

ご神水春まだ遠き水の音      恵美子
用水のきゆうくつそうに鴨の群   春日美智子
こんな日は赤染衛門の碑も凍る   沙羅
若水を龍の吐くとはありがたや   楓
凩や来し方直球ばかりにて     尾燈子
初詣金の名のつく店に入る     正博
境内にかすてらの店六日かな    通江
胎の子の分も大吉初御籤      雄二
(稲垣雄二記) 


岐阜句会(27日  岐阜市西部福祉会館   5名)

第1句座 兼題(寒し 冬田 春隣)
寒き日の自転車どこか壮快      通江
何鳥ぞ冬田けちらし飛ばむとす    春日美智子
日を浴びて冬田かがやく三河かな   沙羅
廊下へと一歩踏み出す寒さかな    上松美智子
炭匂う不動明王春隣         恵美子 

第2句座 当季雑詠
忘れられし風船ふはふは床の上    通江
麦踏むや父の足跡たどるごと     春日美智子
雪の女王から手紙きてゐる朝かな   沙羅
妹と源氏を論ず冬ごもり       上松美智子
あの世でも俳句三昧目刺焼く     恵美子
 (梅田恵美子記)                 


京都句会

 古志京都句会は、今年から毎月、通信句会と、対面句会の二本立てで行う予定です。

 通信句会は夏雲システムを利用して実施。事前に送った初男さんの写真と文章(春日若宮御祭)そして米花さん作の絵手紙(「仕事始」)からの連想句4句以上を含め,8句投句,選は特選1句,入選7句で行いました。14名参加。結果は次のとおりです。  

竹筆の荒々しさを筆始         嘉子
どんど焼き火の粉あびるもありがたや  雄二
播州の野の風荒しどんど焼       陽子
真っ白な世界へ一字筆始        忠雄
売れ残る懸想文あり買ひにけり     美那子
風の神火の神睦むどんどかな      久美
大旦ここより始む詩の道        りえこ
嵯峨野路の藪の昏きに寒椿       初男
灰となるものの尊しどんどかな     美恵子
芹なずな御形のどれがどれぢややら   米花
旅いくつこの冬帽子壁に古り      まき
猪を仕留めて下る雪の山        幸子
どんど焼き待機してをり消防車     英二
侘助や妣(はは)の暮しはつつましく   茉胡

 対面句会は、23日(日)にこどもみらい館で実施。3名参加。第1句座当季雑詠5句出句5句選句。第2句座席題(「夢」「山」「人」「菠薐草」「寒明け」「水仙」)6句出句6句選句。結果は次のとおりです。

手袋のなき子ぽつんと雪遊び      幸子
水仙の折れやすきこと人も又
賀状来る昔の顔と声のせて       (藤井)洋子
何かしら人に会ひたき春隣
妊婦には二つ食べさす寒卵       茉胡
左目のウィンク出来て寒明くる

 なお、対面句会、2月は句会場が取れず休会ですが、3月以降、第4日曜日に行う予定です。通信句会、対面句会とも参加希望の方は、いずれも氷室茉胡宛の次のメールアドレス、あるいは古志誌上に掲載の電話でご連絡下さい。メルアド:mako10himu6@nifty.com  
(氷室茉胡記) 


奈良句会(25日 ズーム句会 10名)

百年の計なき国や寒卵        雄二
雨粒の一つ一つが蠟梅に       まき
ながらへて命の側に寒卵       美那子
青き踏むわがふるさとはわが胸に   久美
蠟梅や鎌倉の寺しづもりぬ      洋子
三人が見つめる父の寒卵       りえこ
蝋梅や曇り日の日のほのかなる    豊
初日の出窓のしずくの煌らかに    正子
大木の洞に供へる寒卵        悦子
寒卵ころげて曲がる千曲川      忠雄
(上田忠雄記)


大阪句会

メール句会
一年の黒字千円大節季        茉胡
年の瀬の受賞の知らせありがとう   りえこ
人形を譲りて広し冬座敷       みつこ
捨てがたき物を捨てゆく歳の暮れ   泰子
風花や死ぬまで踊る赤い靴      陽子
初夢に心の内を覗かるる       美那子
大仏を懐に山眠りけり        豊
億年の七十二歳雑煮食ぶ       百合子
襖絵の虎の眼光年新た        歌子
初みくじ恋が叶ふと言はれても    洋子
どんど焼太古の闇を焦がしけり    久美
学童みなわが孫のごと息白く     美栄子

Zoom席題句会
小面の頬ゆるむかに舞初む      美那子
宝恵駕や面を取りてもお多福で    りえこ
上段の面の一撃冴え返る       百合子
隣より助つ人来たり雪おろし     洋子
ざぶざぶと雪乗せ友禅流しけり    陽子
街に来て道に迷へる雪女       歌子
早梅をたづねて由良の海しづか    久美
探梅や青空ばかり目に沁みて     みつこ
(木下洋子記)


福岡句会(22日 通信句会)

燃え上がる吉書は万葉恋の歌      祥子
気まぐれの妻の手料理春時雨      龍梅
ごめんねを今川焼きに言わせけり    緑
すいすいと水をつつきて鱵かな     充子
豆はモカスローJAZZなり外は雪     博人
バス停まで徒歩三分の春手套      民也
日本よ闇市に戻れ焚火せよ       桃潤
杖ついてやつさもつさやおらが春    和子
猫が来て日向ぼつことなりにけり    幸子
猿曳の猿は欠伸をしてをりぬ      國光
コロンブスのやうに立てたり寒卵    久子
埋もれて何の夢見る落葉かな      真知子
(斉藤真知子記)


長崎句会(28日 メール句会 9名)

当季雑詠 5句
有明の潮の香りや恵方巻        あや
むくれ顔年玉を手にやぶれ顔      順子
冬晴れや肺に影なし曇りなし      なおよ
白菜を抱へて吾子はラガーマン     美智子
うちわびて貝累々と冬の浜       睦美
雪掻きやトンガ噴火のさなかにも    弘美
靭やかな百寿の耳朶福は内       玲子
柚子湯かな四頭身の赤ん坊       まり子
冬晴れや猫がくれたる鳥一羽      瑠衣

題詠2句(海苔・春浅し)より
春浅し試験の朝はコーンスープ     あや
禿山の向こうに浅き春のをり      順子
有明の香り広げて海苔炙る       なおよ
海苔炙る母の太き手は四拍子      美智子
海苔一枚磯の匂ひを集めけり      睦美
海苔篊や津波警報トンガより      弘美
昆布出しを効かせ豚汁春浅し      玲子
食べてみん有明海苔の素の旨さ     まり子
屋根裏に睦む鳴き声春浅し       瑠衣
(米山瑠衣記)              


熊本句会(通信句会 4名)

道場の床の張りこそ初稽古       佐介
初稽古この少年は強くなる       佐介
これが母これが父へと寒卵       茉莉子
酢昆布の口に留まる寒土用       茉莉子
お下がりの赤き帽子や雪だるま     裕子
連衆の声が文字から初句会       裕子
商店街むかし闇市福寿草        榾火
手を繋ぐことが大好き福寿草      榾火
(記 今村榾火)

       

                    

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