2020年12月句会報告

第10回You tube句会(26日 44名)

(3句出句 3句選)
大谷主宰選
【特選】
村人の皆老いて狩犬もまた     原京子 
吉兆の蜘蛛や小銭や掃納      田村史生 
禅林やあの木この木と大根懸け   澤田美那子 
大年やうがひ納めを高らかに    田村史生 
むささびの飛んで歌仙は月の座へ  篠原隆子 
賀状書く心だんだん青春へ     吉田順子

【入選】
胡座から正座に戻し雑煮餅      園田靖彦
目の覚めしここが我が世や浮寝鳥   イーブン美奈子
鯛焼きやこころ壊れてゆく君へ    喜田りえこ
年の空武州相模よ健やかに      越智淳子
三行が吾が一日や古日記       澤田美那子
恋の夢見ずに幾とせ海鼠かな     池田祥子
冬凪といへど鉛のうねりかな     上俊一
長崎に生まれて凧の使ひ手よ     園田靖彦
湯ざめしてエゴン・シーレの女かな  大場梅子
辻々の南無阿弥陀仏氷張る      喜田りえこ
疫の世の根の長々と大根引く     矢野京子
ふたり四人またふたりきり年用意   高橋真樹子
弟は兄に続けと開戦日        米山瑠衣
降る雪や魁夷の青の京の町      片山ひろし
老いながら老ゆる妻見る炬燵かな   稲垣雄二

(丹野麻衣子記) 次回:1月23日


古志Zoom句会


第8回You tube席題句会(19日 14名)


1句座目(席題:むささび、蕎麦掻、藪巻 3句出句 3句選)
大谷主宰選
【特選】 
むささびのがさと飛び来る樹ならん  丹野麻衣子
藪巻やひよろひよろと立つ小松にも  矢野京子
むささびや夢に憩ひて次の枝     園田靖彦
【入選】
巻かれある菰の隙より草の青     矢野京子
蕎麦掻きや待ちくたぶるる頃にでき  臼杵政治
むささびの飛んで高尾の天狗かな   大平佳余子
菰巻や縄もて締めて梅結び      篠原隆子
むささびの飛んでちらちら雪が降る 神戸秀子
蕎麦掻や討ち入り話に膝立てて    神戸秀子

2句座目(席題:焼芋、畳替、室咲 3句出句 3句選)
大谷主宰選
【特選】
焼藷や大きく割って真っ黄色     吉田順子
畳替明日は歌留多よ双六よ      臼杵政治
焼き芋やほくほく顔の満点なり    園田靖彦
【入選】
吉良邸は畳替とぞ図面持て      園田靖彦
仙人掌の花の威張れる室の内     丹野麻衣子
畳替踵で踏んでどんどんと     米山瑠衣
微震にも揺れて室咲スイトピー    神戸秀子
鍛錬の摺足の跡畳替ふ        イーブン美奈子
仏壇の灯も喜ぶや畳替        曽根崇
室咲の何の蕾か咲かんとす      吉田順子
吉良様の無念や室に蘭の花      臼杵政治
(丹野麻衣子記)


第9回You tube席題句会(30日 12名)


1句座目(席題:年忘れ、鳰、注連飾る 3句出句 3句選)
大谷主宰選
【特選】 
向かひ合ひ妻と乾杯年忘れ     稲垣雄二
鳥けものたちの水場へ注連飾る   大場梅子
鳰どりの声聞きをるか木曾殿は   大場梅子
かいつぶり寂しさびしと夢の瀬へ  谷村和華子
猫踏まぬやう氏神に注連飾る    臼杵政治

【入選】
年忘れ退院の君迎へ入れ      上俊一
ご近所もともに老いたり注連飾る  澤田美那子
浮かぶたび変はるこの世や鳰    西川遊歩
飾りして明けゆく波へ大型船    谷村和華子

2句座目(席題:小晦日、掃納、雪女郎 3句出句 3句選)
大谷主宰選
【特選】
ひとときは仕事忘れよ小晦日    丹野麻衣子
掃き納めして貫禄の古畳      澤田美那子
重くれの心のなかも掃納      丹野麻衣子
枯葉みなたたき落して掃納む    澤田美那子

【入選】
掃納め羽根の箒で鳥籠を      西川遊歩
小晦日なんと日暮れのはやきこと  上俊一
小晦日掛かりし絵馬も焚き上げて  臼杵政治
土と手になじみし箒掃納      曽根崇
(丹野麻衣子記)


郵便句会

大谷弘至主宰選

特選    
おらが里落葉時雨を浴びに来よ         神永秀郎         
悲しいと声のかぎりに叫ぶ冬          福井有紀             
嚔する君だけに効く置き薬           神谷和子   
風荒きここもご城下大根干す              小島楓           
御仏のみ手の上にて煤払        関きみ子    

入選   
星満ちてましろき聖樹人に愛                坂口和子        
深霜ややがて祈りの朝が来る           佐藤光枝        
七種のおほかた揃ふ空地あり       中西薹子       
鰈美味その煮凝りのなほ旨し       田中尚子      
木の葉降るはるかに眠りゐる人へ     関きみ子      
着ぶくれて己に克てぬ一日かな      坂口和子        
短日や伊根の舟屋のはや灯り       水谷比嵯代   
しなやかに手足伸ばせよ裸木よ      春日美智子       
花八手錆びて働くポンプ井戸       関きみ子        
数へ日のひと日の果てて夕日かな     梅本元子     
手で洗ふ真白きセーター疫病禍      水谷比嵯代      
寒林や飽かずに眠る森の精        佐藤光枝        
道着付け山茶花掃くや試合前       北野沙羅      
玄冬の馬は為されるまゝにをり      北林令子      
この島や三方三里冬の波         中西薹子        
冬銀河やがては我もおなかまに      梅本元子     
前を向き急ぐ遍路に北下ろし       梶原一美      
みかんの香子供の傍通るとき       神谷和子         
マフラーは赤ときまりて急ぎ出る     土筆のぶ子      
懐手はやぶさ2はまだ来ぬか        春日美智子        
あの世との距離も狭みてちやんちやんこ 原信子                                        
 (斉藤真知子記)


埼玉句会(27日、埼玉会館、5名)

コロナ禍で参加者が少なくなりましたが、2020年も充実した埼玉句会でした。

色恋にカネはつきもの近松忌    琅太
クレヨンの黄色ばかりがへる寒さ  〃
盗人の行こか戻ろか冬の月     靖彦
着ぶくれしおろかな我をいとひけり 〃
着ぶくれて怒りの逃げる所なし   邦紀
槍ヶ岳小槍を抱いて月冴ゆる    〃
蜀出でし凩海へ届かざる      弘
股火鉢昭和は記憶の隅にあり    〃
ふぐちりや灯りまばゆき下関     ゆき
かの人の皿にしのばせ河豚の胆   〃
1月句会の会場は、埼玉会館和室です。
(萬燈ゆき記)


東京Web吟行句会(20-22日、夏雲システム、26名)

吟行地:浅草界隈
兼題:冬至、除夜の鐘、塩鮭

こんなにも一人に慣れて年送る  石塚純子
だんだんに遺言めきし古日記   園田靖彦
日本海みえる軒先鮭吊るす    持田明子
松飾る都はあをき香の中に    関根千方
まだぬくき人形焼や年惜しむ   大場梅子
新巻の一等賞を当てたると    仲田寛子
橇駆つてゆきたき冬の星ひとつ  葛西美津子
あかあかとありぬ昭和も塩鮭も  神戸秀子
百八の鐘のしんがり撞くねずみ  大平佳余子
切り干しや月の色して日の匂い  松岡伴子
一陽来復わが身まるごと小宇宙  わたなべかよ
大根がここに集まる待乳山    金澤道子
新巻や叫びのままに箱の中    原京子
大草鞋履き雷神の旅はじめ    片山ひろし
煩悩の浮世愉しや除夜の鐘    上村幸三
浮寝鳥銀河の渦の真ん中へ    長井亜紀
亜剌比亜の如何様手品インバネス 神谷宣行
君の旅終はりしや柚子湯に一人  長野いづみ
柚子もらひ冬至も近きかと思ふ  那珂侑子
何もかも振り払うかに銀杏ちる  三田菊江
火打石もて魂入れや達磨市    石川桃瑪
供出の鐘遥かなり除夜詣     鈴木伊豆山
去年今年雷門をくぐりゆく    菅谷和子
この年の疫鬼払はん冬至粥    吉田順子
気が付けば冬至や柚子のお福分け 岩﨑ひとみ
塩鮭を猫またぎという罰あたり  服部尚子
(関根千方記)


鎌倉吟行句会(6日、覚園寺)

第一句座  10句投句5句選
水仙のはしりの花を供へけり     琅太
炬燵捨ててふるさと捨てし心地なり  はるみ
段葛一直線や日短か         振昌
冬深く冬を閑かに蓮の鉢       美津子
かばかりの日だまり冬菜干してあり  道子
この寺のいろは紅葉よさやうなら   侑子

第二句座  クリスマス 3句投句3句選
豆電球一つ一つがわが聖夜      美津子
ももの花たつぷりぬつてクリスマス  琅太
クリスマス地べたに金の星ひとつ   道子
講釈師噓淀みなくクリスマス     振昌
樅ノ木は掘り出してありクリスマス  はるみ
あの頃の夢は遠のくクリスマス    侑子
(那珂侑子記)


岐阜句会(17日 岐阜市西部福祉会館 6名)

第1句座 席題(根深汁 懐手 鳰)
ふところ手といて別れの握手かな   通江
中学校裏の小池や鳰         沙羅
懐手せず働くや高齢期        上松美智子
児を抱けば炬燵のごとし夢の中    春日美智子
長き夜のよもぎの枕仄温し      之子
こんな夜は葱いつぱいの根深汁    恵美子

第2句座 当季雑詠
木枯と外はく箒の音の似て      通江
まばらなる雪や岐阜城はれやかに   沙羅
空や空一新に生き年新        上松美智子
淡海の北へ揺らぎてかいつぶり    春日美智子
霜壊し掘りて来たるをねぶか汁    之子
霜の声湧き上りくる山の朝      恵美子
(梅田恵美子記)


京都句会(通信句会)

京都でもコロナ感染者が増加の状況が続いています。古志京都句会、取り敢えず今年の12月から来年の5月までの半年間、集まっての句会は中止し、夏雲システムを利用した通信句会を行うことにしました。事前に送った写真2枚からの連想句を含め、8句投句、選は特選1句、入選7句で行いました。 

水鳥のひとりぼつちの水遊び     りえこ
大白鳥命の道を渡り来し       雄二
いま一度入日に燃ゆる冬紅葉     幸子
落柿舎のいよよなつかし火桶かな   久美
地球こそ生命のゆりかご冬ぬくし   美恵子
悔い多きわが半生や梟鳴く      英二
小春日や眞こと爺似や孫みたり    初男
喃語には喃語で返す日向ぼこ     茉胡
(氷室茉胡記)                   


奈良句会(11日 リモート句会 11名)

大仏の掌にゐるおもひ日向ぼこ    豊
おでん酒通天閣の真つ赤なる      瑳楓
籠りゐのストーブの火が煮焚きの火  まき
自粛とて夫婦ふたり人の年忘れ    洋子
芒原分けて滔々信濃川         正子
短日やいつものやうに長電話     美那子
白鳥と向き合ふわれも胸を張り    久美
白鳥となりて帰へらん産土へ     りえこ
二つ三つ忘れし用や日短か     茉胡
白鳥の穢れなき羽ほどきけり    悦 子
闇ゆれて篝火ゆれておん祭    忠雄
(上田忠雄記)


大阪句会(メール句会)

第一句座 雑詠七句出句 五句選
全山を曼荼羅にして紅葉かな     百合子
セーターを買ふに一日掛けし妻    茉胡
放哉も掃きしか一燈園黄葉      美栄子
柿紅葉大和一国ひと包み       久美 
明日香路の昼餉の間に時雨過ぐ    泰子 
麦蒔や夕日しばらく田を温め     まき 
毛糸編むいつしか解けしわだかまり  歌子
炉開や灰はらはらと灰の上      陽子
山門の兀とありけり石蕗の花     豊 
ひとときはコロナの外に日向ぼこ   美那子 
着ぶくれて気合どこかに忘れきし   洋子 
一列に乙女のスマホ一葉忌      りえこ
玉子酒だんだん楽しくなつてきし   みつこ

第二句座 席題(葛湯、冴ゆる、紅)三句出句三句選
紅き実に小鳥きてゐる葛湯かな    美那子
み吉野の花を心に葛湯かな      洋子
混沌をゆつくりとかすくず湯かな   りえこ
大石垣天守あらばと空冴ゆる     歌子
冴ゆる夜や小惑星から帰還せり    百合子
堂冴ゆる影ふくよかに伎芸天     豊
冴ゆる灯や若きガラシャの片頬に   久美
濃きいろも黄をおぶ色も紅葉美し   泰子
紅色の帯締めほしと雪女       みつこ
久し振りのズーム句会や紅ささん   まき
(木下洋子記)


松山句会(25日 メール句会 8名)

5句出句 5句選 兼題(河豚、クリスマス、冬桜、お歳暮)

風吹けば脊山の守る冬桜       孝子
大空に開きて淋し冬桜        一美
冬桜夢のつづきにゐるらしく     崇
虎河豚をごりごりさばく静けさよ   陽市
藁巻きの山芋さげて歳暮かな     まこと
美しく震へてしずか冬桜       紫春
風に揺れ尚輝きぬ枯れ尾花      孝子
おがくずを蹴散らす歳暮海老らしき  崇
お歳暮よおもひは富士の嶺を越え   陽市
青空の育む風よ冬桜         紫春
クリスマス常のごとくにテレビ見る  和弘
同期会四人になりてふぐと汁     崇
歳暮買ふ時間まだあり歩を返す    一美
薄墨の空に寄り添ふ冬桜       夕未子
雨を得て寺苑の木賊あをあをと    喜久子
息災を願うお歳暮伯母上に      孝子
草河豚はいくさ無き世の濠のぬし   紫春
息子らの代わりに来たる歳暮かな   和弘
河豚鍋や口では惜しくなき命     まこと  
(木下まこと記)


福岡句会(19日 通信句会 11名)

煩悩は箸でつかめぬ海鼠かな     博人
観音のうつくしき煤祓はるる     真知子 
冬の旅翁と火鉢囲みける       桃潤
山眠る大和の国へ玉手箱       久子
キタキツネ星降る空へ黄金の咳    修
一山を解き放ちたる落葉かな     充子
まどんなと名付けしみかん漱石忌   和子
寒卵ひとつ二椀の飯を食ひ      國光
焚火して下山を迎ふ豊前坊      祥子
家々に今山盛りのみかんかな     龍梅
煎餅の棚まで五歩よ掘炬燵      緑
(吉冨緑記)
  


長崎句会(25日 メール句会 9名)

当季雑詠5句
冬ざれや記憶のボタンころころと    弘美
月天心冬の海原射止めたり       まり子
スナックを閉ぢるマダムへシクラメン  直代
くしゃくしゃの笑顔につられ初笑    順子
ベートーヴェン響く地上に冴ゆる月   玲子
石蕗の花強気のエール聞こえけり    綾子
占いのトランプスタスタ春を待つ    あや
初鏡去年の顔は忘れけり        睦美
七面鳥こつそり逃がさん聖夜かな    瑠衣

題詠2句(初笑・年賀状)
初笑マスク集える寄席ならん      弘美
家族写真福呼びよせる初笑       まり子
思ひ出をつなぎつなぎつ賀状書く    直代
大丈夫生きてをるぞと年賀状      順子
年賀状母親となりし友の顔       玲子
初笑父の訓話に児の正座        綾子
コロナ禍や初笑ひとは苦笑ひ      あや
画面から転がる母の初笑        睦美
雨音にも急かさるる日々賀状書く    瑠衣
(米山瑠衣記)


熊本句会(通信句会 4名)

カレンダーの切り取り荒く笹子鳴く   茉莉子
初雪や深紅のリボン握りしめ      茉莉子
食べかけの売り子の昼餉年の市     裕子
木枯や寝起きの母に白湯冷ます     裕子
のつぺらぼう犇めき合うて年の市    戌彦
寒山と拾得と煮る闇夜汁        戌彦
世情騒乱笹鳴きを聞きにゆく      榾火
音たてて割れさうな空十二月      榾火
(今村榾火記)

                 

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