2020年9月句会報告


第6回YouTube句会(26日、47名)

当季雑詠 1句座目(5句出句 5句選)
大谷主宰選
【特選】
海猫の去りゆく胸の白さかな   篠原隆子
健やかな寝息に運ぶ夜食かな   久嶋良子
太刀魚の抜き身大振り銀こぼし  西川遊歩
神いまも夜をさすらひ衣被    篠原隆子
猪道をはづれし猪の打たれけり 吉田順子
肩車子の空高しどこまでも    佐々木まき
彼岸花咲かぬ彼岸の無気味さよ  原京子
蓑虫や地球の上はどこも空    神谷亘行
【入選】
猪鹿と足跡見分け山の子よ    神戸秀子
草の花もう付きまとひ来ない子よ イーブン美奈子
杉風がもてきし秋刀魚煙らせぬ  上村幸三
寄らば散りふれてしなだれ貴船菊 原京子
蓑虫や糸一本で立てこもり    上俊一
竹伐りて利休は茶杓削る陣    鈴木伊豆山
望の月骨なき父のねむる墓    吉田順子
ゆつくりと雲は花野を登りくる  梅田恵美子
台風の目のクリクリとして夜明け 百田直代
蟷螂が畳を歩く野分あと     神戸秀子
秋風に吹かれ原子炉動かざる   神谷亘行
きのふ落下傘の地けふ落花生   鈴木伊豆山
日を受けて新綿白き花となる   片山ひろし
若鮎や炙りし腸の浅みどり    梅田恵美子
大三輪の秋の昼寝もお国ぶり   喜田りえこ
残生は華やかにこそ牡丹根分   澤田美那子
いくたびの飢饉いくたびも藷の蔓 鈴木伊豆山
朝には琴になる木や星月夜    長野いづみ
(丹野麻衣子記)


第4回You tube席題句会(10日、11名)

1句座目(席題:村芝居、衣被、馬肥ゆ 3句出句 3句選)
大谷主宰選
【特選】
水害に取り残されし馬も肥ゆ   原京子
衣被塩振りながら剥いてやろ   丹野麻衣子
蟋蟀とさらふ台詞や村芝居    臼杵政治
チンギスハン天地を制し馬肥ゆる 西川遊歩
村芝居父ちやん出るとふれ回り  木下洋子
【入選】
隠岐馬肥ゆ頼朝乗せしその昔   西川遊歩
コロナ禍をつるりと剥かん衣被  大平佳余子
隠岐の馬肥えて断崖駆け上る   丹野麻衣子
村長の足にも白粉地狂言     西川遊歩
焼酎を生のまま温め村芝居    木下まこと
八十にあと一年や衣被      金澤道子
馬どんと肥えて戦に勝ちに行く  丹野麻衣子
決め台詞やんや喝采村芝居    園田靖彦

2句座目(席題:砧打つ、竜胆、螽斯 3句出句 3句選)
大谷主宰選
【特選】
面打つ父に合はせて砧打つ    大平佳余子
砧打つ妻とはならず歌を詠む   木下洋子
きりぎりす入れて虫籠らしくなる 金澤道子
砧打つざくざくと裁つ布一枚   西川遊歩
きりぎりす峠越ゆれば大和かな  木下洋子
【入選】
竜胆は秋天連れてゐるごとく   臼杵政治
みちのくの奥の竜胆畑かな    大平佳余子
いくさから帰らぬ夫や砧打つ   園田靖彦
(丹野麻衣子記)


第5回You tube席題句会(11日、13名)

1句座目(席題:新藁、落花生、鶉 3句出句 3句選)
大谷主宰選
【特選】
鶉走るちさき小さき小蓑着て  服部尚子
少し吹く風にも押され鶉の背  丹野麻衣子
新藁や扇あふぎと広げ干す   篠原隆子
いつの間に鶉の小屋は畳まれて 岩崎ひとみ
【入選】
新藁の香り豊かや野の昼餉   曽根崇
アメリカの大地果てなく落花生 越智淳子
落花生ぼつちの続く八街へ   菅谷和子
音たてて夜風に乾く楽花生   曽根崇
新藁の温さ君手を入れてみよ  越智淳子
新藁を背負ふ背丈の倍なるを  上俊一
ねむりても納屋の新藁にほひくる 神戸秀子

2句座目(席題:村芝居、竹伐、とろろ汁 3句出句 3句選)
大谷主宰選
【特選】
雲南の奥へ奥へと竹を伐る    篠原隆子
竹伐つてみたし編みたし山買はん 丹野麻衣子
根來椀つかひはじめはとろろ汁  服部尚子
欠け茶碗けふは麦とろやまと盛り 神戸秀子
【入選】
掛け声は名前のちやんや村芝居  大場梅子
わが山に分け入つて来よ竹伐りに 丹野麻衣子
竹伐らな竹に取らるる家屋敷   菅谷和子
竹伐るや畚もお墓も竹の国    篠原隆子
大揺れの一本の竹伐りにけり   斉藤真知子
村芝居与三郎もはや六十歳    服部尚子
村芝居終へて畑へ急ぎけり    斉藤真知子
(丹野麻衣子記)


古志Zoom句会


東京ウェブ吟行句会(20-22日、夏雲システム、25名)

吟行地:向島百花園
兼題:落し水、松茸、猪
10句投句/7句選句

千枚田千枚の水落しけり      金澤道子
日と月の通ひし水を落しけり    関根千方
縄文の女神さながら種ふくべ    神戸秀子
百歳を祝ふ松茸づくしかな     神谷宣行
澄み渉る越後三山落し水      上村幸三
千枚田夕陽と競ひ水落す      長野いづみ
松茸を踏むなふくらむそのあたり  菅谷和子
瓜坊やぶつかりながら育ちゆく   松岡伴子
ほんのりと月の色して女郎花    持田明子
ぐるぐるの更にぐるぐる猪くくる  園田靖彦
毛繕ふものそばに居る良夜かな   仲田寛子
黒鯉の吸うて吐き出す萩の花    飛岡光枝
節くれのたくましき手水落す    大場梅子
虫時雨草ばうばうの良きところ   大平佳余子
田の神に一礼をして水落とす    吉田順子
西行は叩く色なき風の門      岩﨑ひとみ
争いし田の水今日は落とすかな   服部尚子
撃つべきか撃たざるべきか子連れ猪 わたなべかよ
さびしさは萩のトンネル抜けしとき 石川桃瑪
そのうちと言う約束や草は実に   三田菊江
大き音立てて合流落し水      那珂侑子
松茸よ除染袋まで二メートル    鈴木伊豆山
猪鍋や課内旅行は伊豆の奥     越智淳子
咲き初めし萩のトンネル潜りけり  片山ひろし
落し水棚田の縁を一周り      原京子
(関根千方記)


郵便句会

大谷弘至主宰選  
特選   
月浴びて小貝の吐きし金の砂     梅本元子   
ただ祈る夜長を過ごし父となる    原信子   
吾が俳句並べて消えて獺祭忌     神谷和子   
秋雨やコロナで遠くなりし人     土筆のぶ子  
姥捨の月見る願ひまだ胸に      北林令子
入選   
ひいふうみい朝顔開く千代女の忌   梅本元子   
相模灘日は爽やかに落ちむとす    森康子  
祀らるる石より生れし青蜥蜴     春日美智子
一雨や濡石叩く石叩         梅本元子  
こすもすのやさしさつよさ嬰にあれ  原信子  
蜘蛛の網ダリの時計のごとく破れ   春日美智子
ボート池やがて蜻蛉の池となり    小島楓  
葛の花舟流されて空の小屋      北野沙羅  
大西瓜投げては受くる畑かな     関きみ子   
水引の花の奥なり山の神       佐藤光枝
こころにも被綿の露欲しきこと    水谷比嵯代
稲妻にいても立つてもをれぬ犬    坂口和子
(斉藤真知子記)


鎌倉吟行句会(6日 英勝寺、寿福寺 6名)

第一句座 10句投句5句選
ぬばたまの実よりはじまる秋思かな 美津子
唐門の奥の高きに登りけり    振昌
吟行のランチはイタリアン涼し  侑子
走り根につまづく秋の彼岸かな  琅太
射干玉の闇育ちゐる莢の中    道子
敬老の日のオリガミのメダルかな はるみ

第二句座 豊年、かまどうま、聖  
3句投句3句選
やうやくに嫁の決まりぬ豊の秋  はるみ
かまどうま触れてはならぬ過去ばかり 琅太
すさまじや高野聖を田亀とも   美津子

第三句座 水澄む 3句投句3句選
三度目となればしんしん水澄めり 美津子
人を褒め自分を褒めて水澄めり  はるみ
水澄むや紫色の芋やうかん    琅太
(那珂侑子記)


岐阜句会(24日 岐阜市西部福祉会館 5名)

第1句座 席題(おおばこ、夜長、良夜)
白樺の闇に良夜や旅の宿      誠一
踏みつけられ大葉子なほも猛きなり 上松美智子
長き夜や時計の針のあともどり   之子
おほばこよでこぼこ道のなつかしき 春日美智子
大葉子や引つぱりあつて遊びし日  恵美子

第2句座当季雑詠
妻のこと何処かに忘れ大花野    誠一
新蕎麦の歯応へ嬉し山の宿     上松美智子
蜩や御堂の闇に祈る人       之子
ものの声王の如くにちちろかな   春日美智子
水旨き山の湯宿や星月夜      恵美子               
(梅田恵美子記)


京都句会(27日 こどもみらい館 3名)

第1句座当季雑詠、
第2句座席題「種採」「御遷宮」「小鳥来る」、
第3句座席題「木の実」「去来忌」「木賊」。
いずれも6句出句5句選。

愛(かな)しみは水蜜桃の尻のあざ   りえこ
浴びるごと顔にはたかん糸瓜水    幸子
長き夜や孫の寝言の相手して     茉胡
いつせいの声のきほひや小鳥来る   りえこ
日の本は森の国なり御遷宮      幸子
小鳥来る千本鳥居抜けし池      茉胡
去来忌や生涯とほす脇つとめ     りえこ
青々と木賊植ゑあり檜門       幸子
吾が身の箍あちこち外れ木賊刈る   茉胡
(氷室茉胡記)                 


奈良句会(11日 リモート句会 11名)

分け入れば小さき香を置く花野かな りえこ
衣被田中裕明句集かな        洋子
踏み入れば父母の声芒原       茉胡
コスモスや休耕田をさびしうす    美那子
あはうみと空の呼びあふ秋の声    瑳楓
秋声す大文字山の麓より       まき
爪染めてをり秋の声聴きながら    久美
直線の水尾白しや秋の風       豊
ネツトから交わす言の葉秋の声    悦子
窓開けて自粛の家へ秋の声      忠雄
(上田忠雄記)


大阪句会(メール句会)

秋近し夜景の街を水底に      百合子
席空けてもくもく食ぶる西瓜かな  美栄子
ずたずたの世に四五人や地蔵参   一爽
チェロ聞いてゆつくり帰る星月夜  洋子
星月夜夫は吾より乙女なり     みつこ
水旨き秋津島なり梨一顆      陽子
白百合や一句すつくと立ち上がれ  豊
あをあをと明けて檸檬の島うかぶ  久美
ひつそりと小さな秋がものの影   まき
秋川は二夜の雨を響かせて     りえこ
雨やみてカンナの支柱付け直し   泰子
草に寝て神代の話天ノ川      美那子
街の灯に遠く蠍座健次の忌     歌子
混迷の深まる地球穴まどひ     茉胡
(木下洋子記)


岡山句会(27日 倉敷公民館)

席題「石榴」「夜食」
金婚式踏み出す一歩や天高し    有里子
濡れ縁の夜の湿りも十三夜     崇
大盛が来て夜食とは云へぬほど   広
(神蛇広記)


松山句会(18日 メール句会 10名)

兼題:二百十日、秋の蚊、木賊、良夜、運動会
5句出句 4句選

おろおろと賢治のあるく厄日かな  梅子
寝しずまる老人ホーム良夜更く   一美
繋ぎあふ二百十日の船溜り     崇
蜜柑の木に蝶の眠れる良夜かな   沙羅
駆けて頑張れこけて頑張れ体育祭  陽市
かもめみな沖見る二百十日かな   まこと
そばえして昇りくる月濡れてをり  一美
どの屋根もひと眠らせて良夜かな  まこと
秋の蚊の先に来て居る集会所    喜久子
賑わしく厄日の句会終えにけり   孝子
今日上げし棟木匂へる良夜かな   崇
いまの世のいまの家郷の良夜こそ  陽市
木賊多し池鯉鮒の宿の松並木    紫春
にぎやかな五百羅漢の良夜かな   梅子
負けて泣く吾子をみて泣き運動会  真奈美
ゆつくりと青柚太れる良夜かな   沙羅
雨を得て寺苑の木賊あをあをと   喜久子
良夜かな弘法様の水湧きて     紫春
秋の蚊を尚侮らず庭仕事      孝子
(木下まこと記)


福岡句会(26日 あいれふ)

第一句座   
犬の魂残りし小屋に秋の風     和子   
球打てば膨らみてゆく秋の空    久子   
秋風鈴こころの奥にあるこころ   桃潤   
真白なる点字のカルテ秋薔薇    喜美子   
ホームラン秋の空より戻りけり   緑   
桔梗や薬師の薬壺貰へぬか     國光   
露の身や生きてこよなく今楽し   充子   
人呼びにゆく間に消ゆる秋の虹   真知子


第二句座(席題 鷹渡る)   
その性の如何ともならず鷹渡る   國光   
太陽を捉へ一閃鷹渡る       和子
石積みの小橋渡れば鷹渡る     緑  
鷹柱空の無限をひしひしと     久子  
鷹渡り除幕の客に加へけり     喜美子  
豊漁の海残りけり鷹渡る      充子  
鷹渡る高さ鳶飛ぶ高さかな     祥子
唐国のうたを聞かせよ鷹渡る    真知子  
(斉藤真知子記)


長崎句会(25日)

当季雑詠 持ち寄り5句
芋虫や黒装束の尻に針       弘美
川霧や一棹ごとに夢幻郷      まり子
ミュシャの絵のやうにシャインマスカット 直代
も少しと湯船にをらん秋の宵    順子
敬老日節太き手の語るもの     玲子
嵐去り庭にひよつこり茸かな    あや
星月夜一灯の灯となり楽しまん   綾子
雁渡る新しき花供へけり      睦美
秋高しポストに落つる手紙かな   瑠衣

題詠2句(野分・蔦)
野分来るテープ補強の窓窓窓    弘美
実家いま壁一面の蔦紅葉      まり子
大層な野分とならば寝て食べて   直代
あちこちに箒持つ朝野分過ぎ    順子
夜半の野分たつた一人で膝抱へ   玲子
思ひきり潮ふくらませ野分かな   あや
野分あと我が家丸ごと洗ひたし   綾子
這ひのぼる道を迷いて蔦かづら   睦美
蔦もみぢ神学校は静まりて     瑠衣
(米山瑠衣記)                


熊本句会(通信句会 4名)

爽やかに小さき母の肌着干す    裕子
団栗を拾ひ比べて男の子たち    裕子
生命線短き秋茄子は長く      茉莉子
目玉焼きの黄身の揺れたる厄日かな 茉莉子
名水の余蔭ありけり新豆腐     戌彦
雲仙の裏へひらりといなびかり   戌彦
がやがやと記念写真を秋彼岸    榾火
母の手へ団栗ひとつまうひとつ   榾火
(今村榾火記)


熊本あふちの会 (16日 三城宅)


第一句座(当季雑詠)
ヘルメット脱げば黒髪芒原                   節子
高原のブルーベリーや処暑便り             和子
百日紅十年棲まぬ家に咲き                   佳代子


第二句座(兼題 玩具、爪)
秋の陽の窓辺に寄りて爪を切る              和子
秋の夜や子らのおもちゃの電子音         節子
棲み替へて玩具なき家秋の風                佳代子
 (三城佳代子記)

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