2020年8月句会報告

第6回You tube句会(22日、48名)

当季雑詠 1句座(3句出句 3句選)
大谷主宰選
【特選】
たましひの深きくれなゐ桃の種   篠原隆子
われ三歳青田の記憶終戦日     間宮伸子
神代から押しの一手や勝相撲    園田靖彦
哲学をここより始む夜の梨     喜田りえ子
敗戦忌母はわれ産むことをのみ   神戸秀子
曖昧が美徳の国に敗戦日      稲垣雄二
【入選】
大文字の燠を貰ひて五右衛門風呂  鈴木伊豆山
せめてもの送り火明く焚き申す   木下まこと
蜩の七十五年徳之島        鈴木伊豆山
炭坑節こころは皆と踊りけり    臼杵政治
天高しじやぶじやぶ洗ふ古箪笥   百田直代
ビニールのにはかプールの賑はひて 三角逸郎
会ふことのなかりし姉の墓洗ふ   前崎都
かなかなも軍歌も明日も老の夢   イーブン美奈子
マスクしてマスクに溺れ炎天下   長野いづみ
酒買ひに出でて手ぶらで鉦叩    丹野麻衣子
青柿の一枝剪つて子規祭る     片山ひろし
棚経や齢など問はれ正座の児    佐々木まき
丸々とこれぞ松輪の金の鯖     西川遊歩
(丹野麻衣子記)
*次回9月26日


Zoom句会


東京Web吟行句会(16-18日、25名)

吟行地:江の島
兼題:八月、御山洗、西瓜
10句投句/7句選句

八月大名骨きしませて湯に沈む  菅谷和子
大白を傾け富士の山洗ひ     飛岡光枝
買うてよりだんだん重くなる西瓜 金澤道子
江の電のひびきときをり籐寝椅子 神戸秀子
御山洗五湖いっせいにさざめける 越智淳子
八月や七十五年の万華鏡     大場梅子
閑かさを見つけては猫また昼寝  関根千方
戦争を見た目見ない目八月來   長野いづみ
蛸煎餅かじってめぐる島の秋   片山ひろし
秋の帆のいよいよ白きヨットかな 大平佳余子
難民の五歳の我の八月来     園田靖彦
駿河から甲斐へと御山洗かな   仲田寛子
フランスパン程の長茄子道の駅  持田明子
たゆたうて消えぬ灯りや島は秋  神谷宣行
朝顔の縮みあがっている正午   三田菊江
弁天は琵琶をほろんと星こよひ  上村幸三
わが身また御山洗に濯がれむ   わたなべかよ
御山洗胸にひとりの山をんな   岩﨑ひとみ
洗ひ立てて真更の富士の眩しさよ 鈴木伊豆山
八月の海の底なる沈没船     吉田順子
品川の富士も洗ふや今日の雨   原京子
コロナさへ只事となり西瓜切る  服部尚子
よるべなき身にもくらげの気骨かな 石川桃瑪
夏雲や一本道を灯台へ      松岡伴子
五合目のお馬さつぱり御山洗   那珂侑子
(関根千方記)


郵便句会

大谷弘至主宰選
特選
朝蟬や原爆ゆるすなゆるすなよ   小島楓
灼けながら異形くづさぬ鬼瓦    関きみ子
吾が庭の大水飲みよ向日葵は    北野沙羅
滝水にすすぐ祈りの手でありぬ   坂口和子
滝壺のまはりの石はみな仏     坂口和子
入選
厄除けの風鈴吊つて籠りけり    水谷比嵯代
検診の結果のうれしゴーヤ食ぶ   原信子
吉野川遡り来し蛇ならん      中西薹子
滝しぶき不動明王ずぶ濡れに    坂口和子
隠岐やいま鎮かなるらむ凪の朝   西川東久
夢のなか君は香水好きかしら    福井有紀
鎌切よ夕顔棚の番人か       北野沙羅
ひとつ飛びアフリカからの飛蝗かな 春日美智子
七頭の真菰の馬を掻い連ね     中西薹子
朝顔の鉢預かりて日々老いて    小島楓
天の川怖くなるほど星いつぱい   森康子
ちゆうと鳴き土用蛤砂を吐く    神谷和子
かまきりは憎めぬ虫よ指噛まれ   春日美智子
人と人離るる地球風死せり     関きみ子
夏館まこと小さき屋敷神      梶原夕未子
玉の汗貌ふく間なくぽたぽたと   神谷和子
(斉藤真知子記)


埼玉句会(23日 埼玉会館)

コロナ禍の大和し美し青山河    琅太
国あげて我慢我慢で終わる夏    〃
口笛を吹いて犬呼ぶ秋の風     〃
蜩や残る宿題あと三つ       靖彦
何するもお山の大将子規忌かな   〃
政治家に末期ありけり秋の風    〃
武蔵野は天地ひろごる落し水    邦紀
一息も二息もつく残暑かな     〃
へうたんの茎を滴るいのちかな   〃
素麺の味なき味を終戦日      ゆき
馬鈴薯にあおき芽の出で残暑かな  〃
涼あらた連なり泳ぐ金の鯉     〃
*9月の埼玉句会会場は、埼玉会館5D会議室です。
(萬燈ゆき記)


岐阜句会(27日 岐阜市西部福祉会館 5名)


第1句座 席題(カンナ 迎え火 新涼)
花カンナ反骨の色あかあかと     誠一
小学校閉校とかや花カンナ      沙羅
コロナ禍に人出はまばらカンナ咲く  上松美智子
カンナは黄カレーライスは彼の人と  春日美智子
あの世よりこの世は暑し門火焚く   恵美子

第2句座 当季雑詠
コスモスの揺り動かせる空の青    誠一
新涼やメンデルスゾーン小粋なり   沙羅
真つ黒の野良猫二匹月見かな     上松美智子
風孕み風船葛風の花         春日美智子
水引草木地師の里の旅枕       恵美子
(梅田恵美子記)


京都句会(通信句会 9名)

例年主宰にお越し頂いての大文字句会ですが、今年はコロナ禍の影響により、大文字の送り火自体、規模を大幅に縮小しての実施となり、また、コロナ禍騒動もまだまだ治まっていないという状況ですので、大文字句会自体を中止しました。代わりに、有志による夏雲システムを利用した通信句会を行いました。夏雲システムは、古志の東京ウェブ吟行句会でも採用されています。参加者が各自投句すれば、自動的に全句(清記)が作成され、それに基づき選句を送信すれば、自動的に結果が送られて来るという優れものです。

8句投句8句選句(うち1句特選)
残されし生命しみじみ盆用意    美恵子
ここだけの話が好きな生身魂    りえこ
なつかしき昔の闇や髙灯籠     幸子
コロナ菌てふ花の盛りやさるすべり 初男
送り火の夜や名前しか知らぬ祖父  一爽
故郷の廃家傾く天の川       まき
梅干すや比叡の僧の街まわり    英二
糠床にきうりの古るるひとりかな  可奈
卒寿にて入る新居や秋蛍      茉胡
(氷室茉胡記)                   


大阪句会(メール句会)

夜は月にその色返し凌霄花     まき
古本に書き込みの跡梅雨深し    美那子
夏草の光の中へ踏み入らん     陽子
きらきらと白川透けて簾かな    豊
夏芝居水に飛び込む幸四郎     洋子
麦茶冷やす毎年毎年したことを   泰子
囚はれてゐても王様兜虫      歌子
金峰山夏たけなはの谺かな     久美
香水の香の一瞬のパンチかな    みつこ
旧姓をちやん付けで呼ぶ茄子の花  百合子
正座してひとり句会や百日紅    りえこ
あたふたと記憶を繋ぐ昼寝覚め   可奈
また予定無くなる土用太郎かな   茉胡
(木下洋子記)


松山句会(13日 メール句会 8名)

兼題:残暑、水澄む、秋の夜、新豆腐、百舌鳥
5句出句 4句選
ひと息をいれてマスクの秋暑し   梅子
石仏に残暑の水をかけ申す     一美
マンションは足おとばかり秋の夜  陽市
新豆腐一句樗堂に奉らん      まこと
水澄むやもろ手に掬ふ空の色    喜久子
前山に百舌鳥鳴く朝や晴れるらし  孝子
杉の秀のそろふ街道鵙日和     崇
水澄むといふこととほい湖国まで  陽市
秋の夜や祖父の好みし鳩時計    紫春
お大師にまづは捧げん新豆腐    梅子
水澄むや影をほこれる浮御堂    崇
ひそやかな水の郡上の新豆腐    喜久子
この星の川という川水澄めよ    紫春
朱の鳥居映す湖澄めりけり     一美 
箸上げることも大儀に残暑かな   まこと 
水澄みて小魚泳ぐ宮の堀      孝子 
(木下まこと記)


福岡句会(25日 通信句会 9名)

7句出句 5句選
マネキンや鼻つんとして夏帽子   充子
孟宗竹一本秋が来て居たり     桃潤
初秋のひとすぢの風わが腕     久子
平和の和わが名授かる終戦日    和子
ひと匙に崩れてしまふかき氷    真知子
鳴らしみる供花の鬼灯一つとり   祥子
夏がゆき都会に帰るバスに乗る   博人
あわ飯は箸に掛からず終戦日    國光
種無しの葡萄のやうな国に住み   緑
(吉冨緑記)


長崎You tube句会(1日、8名)

当季雑詠 1句座目(5句出句 5句選)
大谷主宰選
【特選】
家に根を張つてだらだら夏休み   眞田順子
ぎこちなく扇子持つ手や初棋聖   百田 直代
兎小屋しづかやへくそかづら殖え  丹野麻衣子
売られゆく金魚尾をふりまくれなゐ 丹野麻衣子
荒梅雨に家失ふや蚤もまた     米山瑠衣
【入選】
金魚売る袋に鈴をひとつづつ    丹野麻衣子
雨音は壊れたピアノ夏の闇     眞田順子
おっと沢蟹もっと急げよ側溝はそこ 林弘美
腕に抱くポチの震へや霹靂神    眞田順子
ジャスミンや蔓に運ばれ居間の窓  徳久綾子
椰子の実は次の島へと流れ夏    米山瑠衣
荒梅雨やもつてけガレキ走る雲   橋口あや
穀象や棲処を喰うて糞の山     米山瑠衣
コロナ禍に怯みおろおろ長き梅雨  百田直代
空蝉のスクラムを組む机上かな   林弘美
金魚屋の奥に明日売る風鈴か    丹野麻衣子
蛸胡瓜噛んで白寿の大安日     橋口あや

席題句会 2句座(3句出句 3句選)
大谷主宰選
【特選】
汗の上に汗句会の汗のひかぬまま  林弘美
玄海の果てに神在す烏賊釣火    百田直代
烏賊釣りや十本足も墨だらけ    米山瑠衣
積木積む額の汗に気付かずに    徳久綾子
火取虫ぞろぞろ落ちるはたき掛け  林弘美
火取虫ちりとり一杯ざつと捨て   米山瑠衣
【入選】
堤防に残る墨あと烏賊釣らん    丹野麻衣子
働いて働いて汗清々し       百田直代
汗を拭くひまもなきとや防護服   橋口あや
一人寝の窓騒がすや火取虫     眞田順子
(丹野麻衣子記)


長崎句会(31日)

当季雑詠 持ち寄り5句
七夕に生れし美男の女難かな    弘美
四世代寄りて祈るや原爆忌     まり子
棚経や子等はスカイプ越しに座し  直代
ザイル出し雪山讃歌口をつき    順子
この香り手のひら丸く水蜜桃    玲子
焼き茄子は大人の味ねと二人膳   あや
句友らの学ぶ姿や天高し      綾子
西日さす厨の釜の黒光り      睦美
ETの横切りさうな今日の月     瑠衣

題詠2句(さやか・盆)
爽やかな笑顔の少女駆けて行く   弘美
爽やぐや散歩の風のいつもより   まり子
爆竹を鳴らし閑かや盆の道     直代
山頂で飲み干す甘露風さやか    順子
おかえりと畳拭き上ぐ盆の朝    玲子
さやかなる蒼空GO-TO飛行機雲   あや
想ひ出は夫の大ホラ盆の月     綾子
魂に帰省自粛なし迎へ盆      睦美
盂蘭盆会僧の袂の香ゆかし     瑠衣
(米山瑠衣記)               


熊本句会(通信句会 4名)

丹精の葉を次々と金亀子      裕子
囓るにはなんと大きな山胡瓜    裕子
原爆忌エコーの中の赤子かな    茉莉子
ワンピースで向かふ式典広島忌   茉莉子
転た寝の漢神めく葡萄園      戌彦
サングラス爆心の空仰ぎけり    戌彦
金沢のらくがん白し夜の秋     榾火
秋暑しお稲荷さんの旗いくつ    榾火
(今村榾火記)


熊本あふちの会(26日 三城宅 3名)


第一句座(当季雑詠)
手花火や休校の子のよく笑ふ                      節子
終戦日母の京城空遠き                                     和子
天を指す平和の像や雲は秋                            佳代子


第二句座(兼題、色変へぬ松、秋の水)
主なき色変へぬ松石の門                                   和子
母の顔と皺を同じく秋の水                               節子
マスクして洗ふ手けふの秋の水                     佳代子
 (三城佳代子記)

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